中央銀行がすべきことは金融機関救済ではない−−ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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英国の経済学者ウィレム・ブイターは、米国では中央銀行と財務省が金融部門の“規制の虜(規制当局が規制される産業のために行動する)”になっていると非難している。中央銀行や財務省が大きな不確実性に直面していることを考えれば、この批判は厳しすぎる。しかし危機が起こっているのに官僚が調整できないのなら、ブイターの批判もそれほど極論ではないのかもしれない。

では中央銀行はどうすれば難局から脱出できるのだろうか。そのカギは、危機が本当のパニック(すなわち一時的なもの)になって、苦境に陥っている金融機関と、もっと本質的な問題を抱える金融機関の区別を明確にすることだ。

金融サービス部門の規模が2倍になった大幅な成長期以降、ある程度の縮小や後退が起こるのは自然であり、正常なことだ。サブプライムローン問題が金融機関の主要なビジネス、特に不透明で極端に収益性の高いデリバティブ部門の落ち込みを引き起こした。金融業界のある程度の縮小は避けられない。中央銀行は無差別に信用を拡大するのではなく、業界統合を促進すべきである。

金融機関を一律に15%縮小させれば金融産業を小さくすることができる。しかし、これはどの産業でも行える方法ではない。また、ソブリン・ウェルス・ファンドが将来の回復を期待して資本不足の企業に投資したいなら、それは認められるべきである。しかし、金融機関の外国人株主は、その企業を生存させるために中央銀行をたきつけて巨額のクレジットラインを提供させるという点で、自国の株主ほどのパワーを持たないことは知っておく必要がある。

今こそ、金融業界が住宅ローンに対する投機的なパニックの犠牲者ではないことを認識するべきである。確かに規制を改善することは長期的な解決策ではある。しかし、万能薬ではない。現在の金融会社の株主と債券の保有者は大きなコストを支払わなければならない。そうでないと金融業界が将来もっと責任ある行動を取ることは期待できないだろう。

ケネス・ロゴフ
1953年生まれ。80年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。99年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001~03年までIMFの経済担当顧問兼調査局長を務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

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