会議まとめるおじさんに困らされているIさんが勤めるのは、伝統のある専門商社です。長引く不況のあおりを受けて採用を差し控え、現在30代のIさんも若手といわれるほどでして、平均年齢がやや高めな会社でありました。
Iさんは新卒からこの会社に入り、いくつかの部を異動して今は海外とやり取りがある部署で働いています。
この会社は非常に保守的な会社でしたが、Iさん自身は熱い魂の持ち主でした。自分を育ててくれた上司や先輩、そして会社のために何ができるか、そしてこの会社が社会に貢献できることは何かとつねに考えているような男でした。この冷めた時代には珍しいタイプです。
しかし、そんなIさんにも会社に不満がありました。
それは、会議まとめるおじさんの存在です。
おじさんは、Iさんの直接の上司ではありませんが、上役にあたります。会議でIさんがどんな意見を言っても、最後の最後でこのおじさんが全員の意見をまとめ、Iさんの意見をあたかも自分が考えた意見かのように言ってしまうのです。そして、そのおじさんがなぜか「さすが! あの人はよく考えているよ」と評価されてしまうのです。
これではIさんとしては面白くはありません。会議まとめるおじさんが評価されているのを聞くたびに、
「いやいやいや! 何見てるねん! あいつ人の意見パクっただけやろ!!?」
と心の中でエセ関西人になってしまうこともしばしばでした。
自分のやりたい仕事をやるために
オーディエンスというものはなんて、浅慮なんだ……。
と自分の環境を嘆きながらも、Iさんはこのぐらいで会社を辞める気はありませんでした。前述のようにIさんは熱いソウルを持った男であり、自分の会社こそが社会的に意義がある会社だと信じていました。
そして、自分のやりたい仕事をやるためには、会議まとめるおじさんに、おいしいとこどりをされている場合ではなかったのです。
Iさんはこのおじさんにどうしたら勝てるか知っていました。それはおじさんよりも早く、したり顔でみんなの意見をまとめて、いちばんいい意見をあたかも自分の意見かのように言うことです。
きっとそうすれば、自分も会議まとめるおじさんと同じように評価されて、昇進だって早くなるでしょう。
しかし、それでは会議まとめるおじさんと同じ土俵で戦うようなもの……。
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