シンガポールが警戒、「テロは時間の問題だ」 攻撃回避に向けた取り組みを大幅に強化
1990年代からイスラム過激派の標的となってきたシンガポールだが、近年になって、西側諸国を狙った攻撃増加や、過激派組織「イスラム国(IS)」が昨年フィリピン南部の街を一時占拠したことを受け、攻撃回避に向けた取り組みを大幅に強化している、と当局者は語る。
シンガポール出身の戦闘員がISの宣伝映像に現れ、12月には他の戦闘員とともに男性たちを処刑している映像が流れたことも、懸案材料だ。
内務省が昨年初めて作成した「テロ脅威の評価報告書」では、シンガポールがISの「レーダー上」にあり、その脅威は「近年で最高レベル」に達していると指摘。安全保障の専門家も、この見方に同意する。
「シンガポールは、ここが安全だと知られているがゆえに、リスクの高い標的になりやすい」と、米保険関連企業エーオンのアジア危機管理責任者で、元英陸軍大尉のダン・ボールド氏は語る。
「フィリピンで攻撃があっても、そのニュースは短時間しか注目されないだろうが、多国籍の人々が働くシンガポールで攻撃があれば、何日も注目が続くだろう」
2017年初めに、エーオンは、テロ攻撃と政治的バイオレンス分野におけるシンガポールのリスク評価を「ほとんどない」から「低リスク」に引き上げた。
過激派による攻撃を回避
実際これまでのところシンガポールは、近年ニューヨークやロンドン、ベルリンなどの主要都市を襲った過激派による攻撃を逃れてきた。
国際的シンクタンク、経済平和研究所(IEP)による昨年のグローバル・テロリズム・インデックスで、世界でも最も低リスクな国の1つとして評価されたのはそのためだ。2001年に米国で起きた同時多発攻撃以降、この国ではテロ関連の攻撃は1件も報告されていない。
だが、国民の4人に3人が、過激派の攻撃発生は時間の問題だと考えていることが、サンデー・タイムズ紙の昨年の世論調査で明らかになった。
シンガポール当局はもちろん、市民に油断しないよう戒めている。学童を含めた市民全員は、緊急アラートを受けたり、疑わしい状況の写真や動画を当局に送ったりできるモバイルアプリ「SGセキュア」をダウンロードするよう奨励されている。