「東芝危機」が日本の産業界に残した重い教訓 債務超過を回避、1年前と大きな違いだが…
「主要国の株式市場で、債務超過で上場廃止となるのは日本と韓国だけ」。メガバンク役員はいまだに不満と未練を隠さない。
東芝が虎の子のメモリ事業を売却したのは債務超過を解消するためだった。というのも、期末時点での債務超過を1年で解消できないと東京証券取引所は上場廃止と定めているからだ。
対して、ニューヨーク証券取引所やナスダックでは、株主資本の最低額が定められているが、時価総額が一定以上ならば上場は維持できる。2015年の不正会計発覚後でも東芝の時価総額は6000億円を割ることはなかった。米国ならば上場廃止の危機はなく、メモリ事業を売却する必要もなかった――これがこの役員の主張だ。
「米国の資本主義のすごみを痛感した」
米国なら不正会計で上場廃止を命じられた可能性が高いと思わなくもないが、日本よりも米国が投資家の判断と自己責任を重視する制度であることは確か。ただ、それは取引所の問題というよりも、経済社会そのものの違いと言えるかもしれない。
結果的にメモリ売却前に債務超過は脱却できた。その原動力となった増資について、ある有力財界人は「米国の資本主義のすごみを改めて痛感した」と振り返る。
わずか3週間で6000億円を集めたのは米投資銀行のゴールドマンサックスだ。彼らはその対価として200億円超の手数料を稼いだ。
直前の株価の90%という有利発行ギリギリの発行価格262.8円で引き受けた投資家は、現時点で15%程度の含み益を得ている。
その筆頭のエフィッシモは日系である。が、日本勢は金融界の本流から離れたこの鬼っ子しか出てこなかった。一方、米国勢はエリオット、ファラロンなど著名ファンドのほか、ハーバード大学の資産運用会社も参戦した。
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