中間選挙を意識するトランプ政権とドル円 アラバマ敗北、支持率向上に躍起な大統領

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さて、中間選挙の為替相場へのインパクトについては、選挙前と選挙後に分けて考える必要がある。選挙前の段階では、トランプ大統領の支持率がカギとなろう。昨年末の税制改革法案可決によって、足元のトランプ大統領の支持率は急速に回復し、2月2日時点のラスムッセンの調査によれば、支持と不支持が49%で拮抗。強力にトランプ大統領を支持する「コアの支持層」についても、一時25%まで低下したが、足元では35%まで回復している。このボーナス的な支持率回復傾向を今後も維持させようとする場合、一段の景気拡大を狙って、景気刺激策(インフラ投資等)を打つ可能性もあるだろう。

米国では投資信託の世帯普及率が4割を超え、家計の金融資産の構成も、全体の約46%が株式と投資信託で保有されている。したがって株価の下落は政府にとって死活問題だ。2月2日、5日のたった2営業日で米国株式市場が7%もの大暴落となったが、翌6日にムニューシン財務長官はすかさず市場の不安を打ち消す発言に努めた。下院金融委員会の公聴会で、「市場は非常に順調に機能している」「規模は大きいものの、正常な市場の調整だ」「下落は金融の安定に一切不安をもたらさなかった」「トランプ米政権の政策は長期的な経済成長にとって非常にプラス」などと説明し、「過度に懸念していない」と一蹴した。

今後一段と株価を押し上げる政策を行う

トランプ政権としては、中間選挙に有利になるよう、今後一段と株価を押し上げようと景気刺激策や一層の金融規制緩和を行う可能性はあるだろう。この場合は、米国経済の拡大とインフレによって、米長期金利が上昇しドル高となるとみている。一方、大統領の保護主義色が強まる可能性もある。「コアの支持層」には、オバマ政権では不遇だった白人の低所得者層で、バノン前首席戦略官が描いた保護貿易、メキシコからの工場移転推進やメキシコ国境の壁建設、ドル安政策やNAFTA(北米自由貿易協定)離脱などを支持する層が含まれるからだ。仮に大統領の保護主義色が、今後、強まった場合はドル安・円高となる公算が大きい。

選挙後については、共和党が勝利すれば現行政策維持となるため、為替相場への影響は限定されよう。今の米国の景気拡大に加え、既に決定した減税や、今後仮にインフラ投資が実現すれば、米国のインフレ率上昇につながり、現状ドル安円高となっているドル円相場は反転してドル高円安になるとみている。当社は2018年のドル円の年末予想値を118円としている。ただ、仮に民主党が上下両院で過半数をとるなど、大勝した場合には、トランプ政権がレームダック化し、新たな法案の多くが議会を通過しない事態も想定されるため、先行き不透明感から一時的には株安・ドル安・円高の流れが想定できよう。

2月2日に米10年債利回りが2.85%を超えて急騰し、これが嫌気されて米国の株価には大幅な調整が入ったが、米国の景気拡大と企業業績の改善を踏まえれば、ムニューシン財務長官が述べたとおり、幅は大きくても一時的な調整にとどまるとみている。少なくとも今年いっぱい米国の景気拡大が続くとの前提に立てば、選挙や国民投票などがドル円相場に与える影響は、短期的なものにとどまろう。

2016年は6月に英国民投票によるBrexitで約7円、11月には米大統領選でのトランプショックで約5円、ドル安・円高が進行したが、当時よりも成長率、景況感、株価をみても米国の市場環境は明らかに改善している。したがって、仮に中間選挙で共和党が敗北しても、ドル円相場に与えるインパクトは、その時の相場環境によるものの、5円を大幅に上回るものとはならないとみている。

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