これまでの上院選と異なっていたのは、ロイ・ムーア候補は選挙期間中に過去の少女に対するわいせつ行為の疑惑が浮上し、支持率が失速したことだ。しかしムーア候補の敗北の原因は、ひょっとすると同氏のスキャンダルだけではなかった可能性がある。CNNの出口調査によれば、ムーア氏の性的スキャンダルが「事実」だと考えている人は回答者の52%、「事実でない」と考えている人も43%を占めていた。また、性的スキャンダルが選挙に際して「重要な要因となった」と答えた人は全体の42%だったが、「重要な要因でない」と答えた人は53%にのぼり、この問題だけが選挙に影響しているとはいえない。
注目したいのは、同調査で黒人女性が98%対2%で、圧倒的に民主党を支持していたことだ。前回のオバマ政権下における上院選では、黒人女性の民主党候補への支持率は91%だったのに対し、今回トランプ政権下ではむしろ民主党支持が増加している。また、若年層や無所属層も民主党支持に流れていることをみると、「トランプ嫌い」や、「トランプ政権に対する懸念」が強まっていると推察できる。
上院は民主党が過半数を握る可能性がある
今回の中間選挙について、まず上院は、改選33議席のうち23議席が民主、現在8議席が共和党である。この共和党8議席のうち、ネバダ州は民主党色が基本的に強いため、今回は民主党候補が勝つ可能性がある。また、アリゾナ州は、共和党のマケイン上院議員が既に引退を表明しているが、2000年の大統領選で当時のブッシュ知事と共和党の指名争いをしたほど非常に人気の高い議員なだけに、次候補が勝てるかは読みづらい。また、テネシー州の共和党コーカー上院議員も、トランプ氏と衝突し引退を表明している。
上院は既にアラバマ州の補欠選挙で52議席から51議席に議席数を減らしており、過半数をぎりぎり確保しているものの、中間選挙で民主党が過半数を握る可能性はあるだろう。一方下院だが、435議席のうち共和党が240、民主党が193、欠員2と、民主党にとっては過半数奪還のハードルは高い。しかし、過去18回の下院選で、現職大統領の党が16回も議席を失っていることや、中間選挙前の州知事選や補選の流れがそのまま本選に続く傾向があること(直近ではニュージャージー州とバージニア州知事選、そして上述したアラバマ州の補欠選挙で民主党が勝利)、などを考慮すれば、場合によっては下院も民主党が過半数を獲得する可能性もゼロではないだろう。
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