渋谷「複雑・歩きにくい」は再開発で解決する? 高低差や横移動が困難、改良が必須課題

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もう一つ、渋谷の街が抱えてきた大きな問題は、都内の他地区と比べて空きオフィスが少ないことだ。今回、渋谷ストリームへの本社移転を決めたグーグルは、2001年に初めて日本法人を構えた際、渋谷の「セルリアンタワー」を本社としたが、後に手狭になり、六本木ヒルズに移転した経緯がある。グーグル同様、アマゾンやLINEなど、かつて渋谷に本社機能を構えた企業も、業容の拡大に伴い、渋谷を離れていった。

複数の再開発プロジェクトが同時進行し、混沌とした印象の渋谷駅周辺。「渋谷ヒカリエ」より(筆者撮影)

「最新オフィスビル市況」(三鬼商事)の2017年12月時点のデータを見ても、渋谷区・千代田区・中央区・港区・新宿区の都心5区の平均オフィス空室率が3.12%であるのに対して、渋谷区は1.67%と需要が高い一方、「東京の土地2016」(東京都都市整備局)によれば、区別事務所床面積は、渋谷区は587万平米と、港区の1799万平米や千代田区の1679万平米の3分の1しかなく、とくにハイグレードオフィスの絶対数が不足している。

渋谷の回遊性が高まる

この点について亀田氏は、「渋谷スクランブルスクエア東棟だけでも、オフィス総賃貸面積が7.3万平米あり、7大プロジェクト全体では27.2万平米のオフィスが新たに創出される。新たにホテルを作り、出張で訪れた人たちに渋谷に泊まっていただくことなどとあわせ、ビジネスユースでの渋谷利用客の大幅な増加を見込んでいる」とする。

数字だけ見れば、新たなオフィスを加えても渋谷区の事務所床面積は港区や千代田区はもちろん、中央区の1227万平米にも遠く及ばないが、駅近にこれまで希少だったハイグレードオフィスが増えるだけでなく、インキュベーションオフィス、シェアオフィス、コワーキングスペースなど多様なオフィス環境が用意されることは、数字以上の効果があるだろう。東横線・副都心線の直通運転開始により、渋谷駅が「乗り換え駅」から「通過駅」に変わりつつあるという分析もある中、上述の乗り換え動線の改良と相まって、渋谷の街の回遊性向上への期待が膨らむ。

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