「スポーツ実績だけで大学入学」の大きな弊害 「机を捨てた」大学生の厳しすぎる現実とは?
また、推薦入試も当時の文部省により1965年以降に公認され、拡大の一途をたどる。1980年代に入ると、1982年に早稲田大学教育学部体育学専修で特別選抜が行われたのを皮切りとして、現在実施されているスポーツ推薦の形態が急速に広まる。
それと並行して、1987年には臨時教育審議会「教育改革に関する第三次答申」の中に「青少年のスポーツ活動の振興を図るため、入学者選抜や就職の際にそれらの活動が積極的に評価されるよう配慮する」と明記された。その後、1990年代に始まる入試多様化の動きの中で、多くの大学が、スポーツで実績を挙げた高校生を、あまり学力に重きを置かずに入学させる枠を作るようになった。
興味深いのは、推薦を受けられるスポーツ種目が一般的に人気があるスポーツに限っている大学が多い点である。このルートで入学した学生たちが、テレビやラジオで中継されるような人気のある大会で、かつての強豪校を超える活躍をするようになれば、大学の知名度アップに大きく貢献する。また、オリンピックや世界大会で活躍した学生がいる大学には、補助金も出されることも大きい。大学は、学問で功績を残すよりもスポーツで成功する方が、分かりやすいメリットを享受することができるのだ。
大学進路実績の向上は、高校のイメージアップになる
スポーツで大学に入学できる可能性が高まれば、高校の部活動も必然的に変わる。高校の学力レベルは各地域の塾の模試がはじき出す偏差値で序列化されているが、それを上げるためには入学する生徒の層を少しでも上げなければならない。しかし、保護者や中学生が高校の教育内容を精査することは難しく、大学進学実績で判断しがちである。つまり、受験方法はどのようなものであれ、大学進路実績の向上は高校にとって比較的短時間で効果がわかるイメージアップとなる。
高校の部活動顧問で特定の大学にパイプを持ち、実績も上げられる教員の高校内での発言力も増すようになった。特に、私立高校では野球などの人気種目の部活動に力を入れる。学校名を出すことはできないが、関東圏のある高校では、リトルリーグに所属していて少しでも目立つ中学生には声を掛け、とにかく自校に入学させるという。内部の関係者によると、部の監督は「高校でその生徒が伸びても伸びなくてもいい、ほかの高校に行って能力を開花させてライバルになると困るから」と発言していたという。
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