それでも、財政金融政策による総需要押し上げが続き、今後2%のインフレが定着するような労働市場の逼迫が実現すればどうなるか。非正規社員の中には正社員として働きたい人がまだ相当残っているのだから、正社員化がさらに進む余地は大きい。また1990年代から、企業などで働く女性は増えているが、そうした環境になれば優秀な女性を戦力として確保するために、子育てを経験しても不利にならないキャリアパスがもっと広がるだろう。
日本の貧困世帯にはシングルマザー世帯が多く含まれるが、彼女たちが一人で子育てしながら働いても生活に困窮しないことが、労働市場をさらに逼迫させることによって可能になる。この結果、筆者が最も大きな問題と考えている、異常な「日本型所得格差」(2017年12月18日の記事「金融緩和で所得格差はむしろ『縮小』している」を参照)が解消していくと考えている。
「人手不足」はなお「局所的現象」にすぎない
なお、数年前から、経済メディアなどでは人手不足が問題になっていると報じられているが、それは局所的な現象にすぎないのが実情だろう。過去の日本がそうだったのだが、失業率が2%台後半では、就業希望者がほぼ職につける完全雇用に達していないということである。
つまり、2%インフレ目標安定というデフレの完全脱却の実現で、まともな労働環境が訪れる。言い換えれば、「ブラック企業」が跋扈(ばっこ)していた2012年までが異常だったにすぎない。そして、1990年代からデフレ解消に不十分な対応に終始していた日本銀行が、2013年から黒田東彦総裁らが率いることになり「レジームチェンジ」を実現したことの成果として、ようやくまともな労働環境が広がりつつあるわけだ。
すでに金融緩和強化が徹底されたことで、5年前と比べればデフレ懸念は後退し、経済状況、労働市場は目に見えて改善した。その結果、政治的には、支持率の上昇によって、安倍政権は長期政権を実現したわけである。
これまでの経緯を振り返れば、今後安倍政権が政治基盤をさらに強化するために、求められる経済政策の方向性は明らかである。
そして、民間企業が主導する「働き方改革」を実現するために最も確実な手段は、総需要をさらに刺激する財政金融政策を徹底することである。2%インフレ実現という目標実現まで、財政金融政策による総需要拡大を続けることで、当初のアベノミクスの政策を貫徹することが肝要だろう。
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