トランプ政権がついに始めた「保護貿易」の罠 中国や韓国からの輸入制限は吉か凶か
1月22日、米政府は「太陽光パネルと家庭用大型洗濯機に対して、通商法201条に基づくセーフガード(緊急輸入制限)の発動を承認した」と発表。中国企業を念頭にした「太陽光パネル」は、既定の輸入量を超える製品に対しては最大30%の追加関税をかけるというものだ。
洗濯機は、韓国のサムスン電子やLG電子の製品をターゲットにしたものだが、輸入枠120万台の超過分には最大50%の関税を上乗せすると発表。セーフガードの発動は、2002年のブッシュ政権時代の鉄鋼製品以来16年ぶりとなる。
セーフガード発動に対して、中国は「救済措置の乱用であり、強烈な不満」というコメントを出し、韓国もWTO(世界貿易機関)に提訴することを検討している、と報道されている。
対中強硬派として知られるナバロ氏を国家通商会議の委員長に指名するなど、中国との貿易不均衡是正への本気度はよく知られていた。今後、セーフガードがいつ日本に向けられるのかは不透明だが、トランプ政権は今後、セーフガードの対象となる品目を増加させていく可能性がある。
<ドイツ(EU)との通貨戦争>
トランプ政権は物騒な言い方で相手を威嚇することはよくあることだが、ドイツに対する威嚇もそんな手法のひとつだった。大統領就任直後、「ユーロ」は甚だしく過小評価されていると指摘し、ドイツの貿易での優位性を高めていると主張。ドイツに対して貿易不均衡が著しく、経済戦争の宣戦布告をすると息巻いた。
結局、その後はドイツを含めて欧州全体に対して貿易不均衡を指摘することは少なくなった。同盟国という意識から欧州に対するプレッシャーは避けたと思われるが、今後はそうもいかなくなるかもしれない。
というのも、この1月18日にIMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事が、ドイツのフランクフルトで、2017年のドイツの経常黒字が世界最大になったことに触れ、「一部の国が経常赤字を拡大していることと無関係ではない」と指摘したからだ。
ドイツ政府は、2017年だけではなく2018年も財政黒字を更新すると予測しており、2018年も引き続き好景気は続くとみている。トランプ政権が、ドイツに対して再び強硬な姿勢に出るのも時間の問題かもしれない。
日本に対しても例外はないかもしれない
<武器購入迫る日米貿易不均衡>
かつて、トランプは「日本にはいつも負けている」「日本が米国の牛肉に38%の関税をかけるなら、日本車にも38%の関税をかけてやる」と発言し、日本側を震え上がらせた。実際に、アジア歴訪の際には「米国は日本との間に年間700億ドル(約8兆円)もの貿易赤字を抱えている。対日貿易は公正ではない」と指摘して、日本と米国との2国間貿易については「両国にとって公正な貿易交渉をスタートさせる」ように日本に求めた。
メディアの報道では、日本が貿易不均衡の代わりに大量の武器を購入するから、これで不均衡問題は沈静化する、といった印象を与える報道がなされていたが、武器の輸入と貿易不均衡は別の問題だ。
今後、トランプ政権が追い詰められれば、日本との貿易不均衡に対しても、懲罰的な関税をかけてくる可能性はある。
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