地下鉄定期付き「アディダス」シューズの衝撃

1年間有効だが、履いて乗らないと無効に

ところで、「定期券付きの靴」をどうやって改札機に通すのか?といった疑問を持つ読者もおられるかもしれない。

ベルリンを含むドイツでは、改札口が全くなく、乗客はなんらかの切符を必ず持っているという前提で成り立つ「信用改札」の制度が導入されている。したがって、「靴にチップが埋め込んであって、ETCゲートのような改札機を通るとOK」などといった仕掛けがあるわけではない。なので、どんな形状の切符であってもその区間に有効でさえあれば良いわけだ。

こんな例もある。街の北西にあるベルリン見本市会場(メッセ)で開催されるイベント入場券には一日全線乗車券が刷り込んであり、参観者は自由に街の乗り物を使ってベルリンを巡ることができる。おかげで1日数十万人が集まるイベントでもほとんどの参観者は公共交通機関で会場を訪れるので、道路渋滞の心配も解消するわけだ。

履いて乗らないとチケットとして無効

今回のコラボ企画は、靴としてはやや高いが、乗車券としてはとても安い。そこで、BVGはこんな厳しい規定を定めた。「この靴の保有者は、必ず自分で履いて電車に乗ること。ただ持っているだけでは乗車券として無効」――。

靴の図柄は地下鉄車両の座席の布から得たものだ(Photo by @overkillshop | Overkill)

とはいえ、これから年末まで11カ月あまりある。毎日履き続けたらぼろぼろになってしまうかもしれない。「アディダスは靴の耐久テストでもやりたいのか?」と揶揄する人もいるが、現地の報道をつぶさに調べてみると大方の予想は「誰も履かない」。「今回並んだたいていの若者は、コレクターズアイテムとして持ちたいのであって、自分で履くとは思えない。新品で持っていたほうが高く売れるから――」との見立てだ。

実際に発売前にはすでに、行列の前のほうにいた若者が「600ユーロで売る」とオークションサイトに上げていたというし、発売開始から1時間後には1200ユーロ近くまで値段が上がっていた、との情報もある。レアアイテムの需要と供給関係はいずこも同じということか。

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