日本が、バンクーバーに学ぶもの ゲームなどの新規産業を大胆に振興

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バンクーバーオフィスで開発するタイトルで最も目覚ましい成果を上げているのが、「FIFA」シリーズだ。2012年10月に発売した「FIFA13」の累計販売本数は1600万本に上り、アクティビジョンの「コール・オブ・デューティー」に次ぎ、世界で2番目に売れているゲームタイトルと言われている。サッカーゲームとしてのシェアは8割以上を占め、EAが年間で稼ぐ売上高約4000億円のうち、25%程度を占めている。当面この磐石な地位は揺るがないだろう。

日本も産業構造の転換待ったなし

バンクーバーには人材の集めやすさや質の高さ、さらには国籍の多様性から生まれる働く環境の良さや税制面でのバックアップなどに惹かれて進出してくるデジタルメディア関連企業が多い。国による支援のみならず、温暖な気候や治安の良さも、進出のハードルを下げる要因になっている。

EAのバンクーバーオフィスには任天堂の岩田聡社長も来たことがある。写真はそのときの記念品だ

翻って日本の場合、経済産業省が旗を振る「クール・ジャパン戦略」の提言資料で、2009年から2015年の間に60万人程度の雇用が減少すると指摘している。これは国内の製造業が空洞化し、サービス業における雇用創出が追いつかないシナリオに基づくもので、新しい産業の育成は待ったなしの状況だ。

バンクーバーの人口は230万人、BC州全体でも440万人と日本との単純な比較はできないが、BC州は新規産業の振興策が奏功し、毎年8万3000人の新しい移民や一時雇用者が入国している。労働人口の5人に3人が44歳未満と新陳代謝も高い。

常に革新を続けるこの街から、日本が学ぶことも少なくないかもしれない。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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