ソニーは、なぜおかしくなってしまったのか 丸山茂雄氏「ちょっとソニーの話をしよう」
黒川:そんなことはないでしょう。何にもない人のところに誰も話を聞きにこないですよ。そもそも日本はプロデューサーってものに対する周りの人の意識が足りなさすぎると僕は思ってるんですよ。ハリウッドだとキャスティングして、ファイナンスして、システムを作って、ライン管理をして、最後の製作なりプロダクトに対して責任を持つ人がいるわけじゃないですか。でも、日本はそれが個別になっちゃってるから、プロデューサーってあまり表立って評価されないんですよね。
確かにプレイステーションは丸さんだけでは生まれなかったかもしれませんが、久夛良木さんだけでも生まれなかった。丸さんの仕立てやサポートがあったから生まれたと僕は感じています。音楽のシーンで言っても丸さんは新しいジャンルを作ったし、新しいコンテンツや人も作ったし、レコード会社も作ったわけじゃないですか。その意味では壮大なプロデューサーだと僕は思いますし、そこにすごくあこがれるんですよ。しかも、1982年ぐらいから変わっていない。僕がオリコンで読んでいた頃からスタンスが変わっていないから、余計にすごいなって思うんです。
丸山:こんな出来の悪い管理職をそういうふうに評価してくださるのはありがたいことです。まあ、俺の力じゃないけど関係したもの、手掛けたものはけっこう実績があるってことだよね。
黒川:いやいや、僕は丸さんのお力だと思いますよ。
丸山:いやだって俺の力だなんて一瞬でも思った途端に、こういう俺の像は崩れるちゃうじゃない。だからつねに自戒してないとね、ハハハハハ。
黒川:やったのは俺だって言った瞬間に「そうじゃないですよね?」って言われちゃうかもしれないと。
丸山:「そうじゃないでしょ」って声が、わーって沸き起こるから。
黒川:でも、そう言っちゃうところが丸さんの東京生まれらしさというか、いさぎよくてカッコイイところですよね。
「ちゃんと育てられた」
丸山:まあ、東京生まれで……俺のウチはカネはなかったけど、ちゃんと育てられたっていう気はするよね(丸山氏の父は丸山ワクチンの開発者である故・丸山千里氏)。「ちゃんと育てられた」っていうのがどういうことかというと、あなたが言うように一応礼儀とかマナーなんかを踏まえているっていうこと。でも、今はちゃんと育てるってことが難しくなってるよね。
たとえば、ちょっと前に話題になった女性の議員さんは、子どものときから受験勉強して、私立の名門受験校に入って、東大法学部に行ったわけじゃない。それが「あのハゲー!」だからね。でも、アレがなければ、ああいう育ちの人は基本的にはよしとされてるわけじゃない。
黒川:そうですよね。あと、ふたつだけ伺ってもいいですか? eスポーツの理事をおやりになってますよね。
丸山:それはもう辞めた。
黒川:え、辞めたんですか?
丸山:そう、eスポーツは協会がいくつかあって、そのひとつが、俺が(理事を)やってたJeSPA(一般社団法人 日本eスポーツ協会)ね。JeSPAはオリンピック種目を目指すっていうのが基本的な目的だった。それで、実際にオリンピック参加を前提にするならば協会を統一する必要があるという話になった。
黒川:正式種目になるかならないかで話題になりましたよね。
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