ソニーは、なぜおかしくなってしまったのか 丸山茂雄氏「ちょっとソニーの話をしよう」
丸山:俺はなるべくソニーの土俵には乗らない。違う論点で親会社と戦うわけよ。当然のことながら向こうは、やれPLだBSだ、資本効率がどうのこうのみたいなことを言ってくる。そんなことしかわかんないから。この新人のこの曲が当たるかどうかなんてことはわかるワケないからね。
だから、そういう攻め方をしてくるんだけど、こっちはそんなモン関係ないんだよって。あのミュージシャンはどうしようもない不良で、もしかしたら事件を起こすかもしれない。でも、アイツは今ね、純利益を毎年50億円を出しているんだと。アイツにはクスリやってるってウワサがあるとか、コンプライアンスがどうのこうのとか言ってクビにしていたら、エンターテインメントビジネスは成立しないんですよっていう。
黒川:アハハハハ、でも確かにそのとおりですね。
丸山:でしょ? そうやって俺たちはこっちでとても幸せな関係を築けているわけよ。そういうのが好きなヤツはこっちに入るんだし、そうじゃないヤツ、頭のいいヤツは向こうに行けばいいわけだからさ。で、俺は平井さんもこっちだと思っていたのよ。だから、平井さんがソニー・ミュージックの社長をやるっていうんだったらもう全然オーケーよ。
黒川:あ~、なるほど。そういうことだったんですね。
平井さんが苦労するのは見たくなかった
丸山:それに、俺は平井さんをかわいがってたから、苦労するのは見たくないなっていうのもあったよね。ソニーはホントに人材不足になっちゃってて、その極め付きが出井さんの社長じゃない。だから、あいつがソニーに行くことになったとき、「ヘタするとお前でも(社長で)いいって言いかねねえぞ」って。そこまで言ったんだよ。「ややこしくなるから、そうならないようにしろ」ってサジェスチョンした。
黒川:すごい言い方をしたんですね(笑)。にもかかわらず、そこに手を出してしまったと。
丸山:だから、やっぱりソニーの社長っていう肩書はすごい魅力的なんだろうね。
黒川:そりゃあ魅力的でしょう。
丸山:でもまあ、アイツは鈍感だからよかったんだろうね。
黒川:ええ? 平井さんは鈍感なんですか?
丸山:そうそう、鈍感なの。社長になった直後の何年間か、平井さんはボコボコにやられたじゃない。ソニーのOBたちからガタガタ言われ、アナリストやら日経新聞やらも「バカだなんだ」と、みんながたたいた。俺だったらあんなの耐えられない。普通の人間には耐えられないって思うよ。でも、あいつは耐えられたんだよ。それは鈍感だってことじゃない?
黒川:鈍感と言っていいのかわからないですけど(笑)。
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