ソニーは、なぜおかしくなってしまったのか 丸山茂雄氏「ちょっとソニーの話をしよう」

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丸山:もちろん、いい意味でだよ。いい意味で鈍感なんだよ。だから、そういう周囲の雑音なんかヘッチャラだっていうんだったら、(ソニーの社長も)できないことはないかなと。

日経のインタビューでも俺はそういうふうに言った。鈍感っていう言葉は使わなかったけどね。けっこう胆の太いところがあるから、やれるかもしれないと。

久夛良木さんが社長になれなかったワケ

黒川:ちなみに、久夛良木(健)さんを次期ソニーの社長に、といううわさが上がった時期もあったと思うんですけど、なぜなくなったんでしょうか。

丸山:だって、大ゲンカするんだもん。久夛良木さんはこういう人間で、こういう言い方をしたらダメっていうのがわかってない。だから、みんなカッとくるわけよ。ただ、大賀さんやCFOだった伊庭(保)さん、徳中(暉久)さんとか俺とかは簡単に言うと人間の器が大きいから(笑)。

久夛良木さんがどんな生意気なことを言っても、平気で聞き流せるっていうかね。やっぱり、そういう繊細さと鈍感さと両方を持ってないといけないわけで、久夛良木さんの言うことにいちいち反応してたらダメだよな。

黒川:そうですね。

丸山:久夛良木さんはミュージシャンと同じようなクリエイターなんだよ。でも、やっぱり久夛良木さんは変わっていて面白いよなっていうのもある。結局、ステージが違うんだろうな。ステージというか立ち位置と言えばいいかな。売れっ子ミュージシャンがすごい生意気なことを言っても、俺とはいる場所が、仕事が違うんだからと思えば腹も立たない。

ミュージシャンとかクリエイターってさ、自分が考えているイメージや理想を一般人やファンに言ったりするだろ。単なるサラリーマンが独りよがりで、自分はすごいとか言っているのとワケが違うんだよ。そういう意味で言えば、器が大きいとかじゃなくて、ステージとか役割が違うからっていうふうに思えるかどうかだね。久夛良木さんが、自分と同じステージにいる人間だと思ったら価値観が違うんだから、そりゃあ大ゲンカになるよね。

黒川:久夛良木さんには実力もあるし知識や経験もあると思いますが、渇望感のようなものを感じるんですが……。

丸山:まあね……久夛良木さんはソニーでは、そんなに恵まれたところにいなかったから。

黒川:もともとは音源チップの開発責任者でしたよね。

丸山:そうそう。情報研っていうところにいたんだけど、そこはソニーがウンと儲かっていたとき、変わりものを集めて遊ばせとこうっていうところだったんだよ。だからかどうかわかんないけど、いつも見るからに戦闘態勢に入っているっていう顔をしてるもんなあ。

黒川:そうですね。何かこう……人を寄せつけない感がありますよね(笑)。

丸山:ダハハハハハ(爆笑)。

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