ぐるなびが飲食店の「SNS支援」までやる意味 1000人の営業人員で掘り起こす「業界の課題」

拡大
縮小

日本の外食業界では、こういった小規模事業者が市場全体の6割を占めており、食文化の多様性を支えている。ここの経営が成り立たなくなれば、選択肢が減る、利便性が落ちるなどの形で、食べる側の消費者に跳ね返ってくる。

1000人のインフラを持つ当社だからこそできることは、ITツールの導入を手伝うだけでなく、ちゃんと使えるようになるまで面倒を見ること。人手不足という逆境は、業界にとって経営のやり方を大きくアップデートするチャンス。ぐるなびにとっても、顧客との接点を広げ、足元の苦戦を打開するチャンスといえる。

予約から決済までサイト上で完了

久保征一郎(くぼ・せいいちろう)/ぐるなび社長。1945年東京生まれ。東京工業大学卒業。コンピュータ開発会社設立などを経て、1996年に飲食店情報検索サイト「ぐるなび」を開設。2001年から現職(撮影:梅谷秀司)

──飲食店向けの訪日外国人対応支援も進めていますね。

本格的に始動して2年半くらい経つが、やっと外国語に翻訳した飲食店・メニュー情報が一定レベルまで増えてきて、少しずつ使える形になってきた。今後はお店やメニューの登録数を伸ばしつつ、メディアとしての使いやすさを上げていく。

足元で取り組んでいるのが、日本に来る前に飲食店予約をできる仕組み作り。ぐるなびというメディアは認知度が低いので、海外のOTA(オンライン旅行会社)と組んで、彼らのサイト上に事前予約できる日本の店を掲載するスタイルだ。

このサービスの最大の強みは、予約から決済まで全部サイト上で完了できることだ。日本に来たら、お店に行って飲食するだけ。追加の注文をしなければ日本で支払いは発生しない。メニューの説明や支払いなど、店頭でのやり取りを減らせることは客側にも飲食店側にもメリットがある。事前決済であれば、店はドタキャンのリスクも回避できる。

昨年12月からは、中国の口コミサイト「大衆点評」と「美団」を運営する、O2Oで中国最大手の美団点評とこの集客・予約・決済サービスで提携が始まった。2018年は提携先をさらに増強していきたい。

(『週刊東洋経済』12月30日ー1月6日号「トップに直撃」に加筆)

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT