「MERY」が過去の栄華を取り戻すための課題 何が変わって何が変わっていないのか?

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1月中旬時点で公開されている記事数は1600本以上。閉鎖直前は約10万本あったことを考えれば、サイトの規模は比べるべくもない。まさにゼロからの再構築だ。

山岸氏、江端氏は「名前は同じ、アプリも同じものを引き継いでいるが、ゼロからの再構築。再ローンチではなく、新しいMERYを作り直している」状況であることを認めている。機能面でもBOX(自分、他利用者の”お気に入り”をリストとしてまとめて閲覧。MERY公認ライターのBOXもチェックできる)を新設するなど、新たな要素を盛り込んだ。

山岸氏は「ゼロからのスタート、ゼロからの記事の積み上げが必要なだけに、かなり厳しい数字を想定していたが、読者の反応は想定以上にいい。徐々にファンが戻ってきてくれている実感はある」と話す。

ただし、前述したように、編集部で1つずつの画像について使用許可を求め、すべて揃わなければ公開されない仕組みであるため、契約ライターが作成する記事は日々増えているものの、記事公開のペースは上がらないというジレンマがある。「記事を読んでくれる読者はいるが、累積本数が少なく日々の掲載ペースにも限界があるため、読み始めると関連記事へのリンクも含めて、すぐに読み終えてしまう」(江端氏)。

今後、2~3カ月を目処に画像の使用許諾のプロセスを迅速にするために、どうコミュニケーションするかを工夫し、また独自で画像のストックを作っていくなどの工夫をしていくことで記事掲載のペースを上げる計画だという。

MERYは完全にボトムアップ

MERYコンテンツ本部・副本部長の藤井敬也氏は、小学館で女性誌を長年編集してきたが、MERYの記事の作り方は「通常の雑誌とは完全に異なる」と話す。「雑誌の場合、編集長がコンセプトを決め、ラインナップを作って、それを下に降ろしていく形で全体のコンテンツを構成します。どういった情報を発信するのか、その方向性はそこで”寄せ”られていく。しかし、MERYは完全にボトムアップで上からの指示はありません」。

ライターに記事のテーマ設定さえ行わないし、どういうテーマ設定が”キテいる”とか”コレが流行ってるから集中的に取り上げて”といった指示、管理もないという。「実際にMERYに関わるまでは、もっとライターの書く記事に編集部が関与していると思いました。ところが私もはじめて現場に入った時は驚いたほど何も指示せず、自由にさせています」(藤井氏)。

”カワイイをもっとたくさん発信したい”と考えて公認ライターをつとめている女の子たちの多くが読者層で、まったく同じ目線で記事テーマを選び、書き口、表現方法なども、「ライターひとりひとりで異なることが、MERYの魅力」と藤井氏は言う。「たとえば、どんなテーマ設定でもタイトルや文章の中にプチプラ(プチプライスの略語で価格が安いこと、転じて価格は安いのにカワイイこと)と入れれば、そこそこビューは取れます。でもMERYの場合、筆者自身がプチプラだと思わなければキーワードとしては入りませんし、そもそも”プチプラでビューを取る”という意識がない。”カワイイ”の定義は女の子ごとに違う。多様な女の子たちに、それぞれが考えるカワイイを発信する環境、場を提供しているのがMERYということです」。

もっとも、自由に書かせるとは言っても、中身についてまったくノータッチではない。旧MERY時代に学生アルバイトで記事執筆をはじめ、そのままペロリに入社。サイト休止後も退職せずに復活を待っていたという女性社員に話を聞いた。

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