日本のインフレ率2%目標は必要だったのか 米国の物価新指標「UIG指数」をどう読むか

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にもかかわらず、統計ではデフレ脱却できていない。同じ異次元の金融緩和を実施しているのに、なぜ日本には統計上、現れてこないのか。あるいは、われわれは日本のインフレの兆候を見落としているのかもしれない。

そもそもここ数年、安倍政権下では景気のいい統計ばかりを前面に押し出してきて、メディアもそのまま報道することが多い。いざなぎ景気を超えて、現在は戦後2番目の長さの景気拡大局面ということになっているが、国民の大半は景気回復の実感はないと言っている。実質賃金が一切上昇していないからだ。

戦後2番目の好景気なのに、なぜインフレ目標2%が達成できないのか。なぜ、実質賃金が上昇しないのか。残念ながらその説明はほとんどなされていない。

インフレによる財政再建を目指しているのではないか?

ここで日本政府はこのまま異次元の金融緩和をどこまでも続けていこうとしているのではないか、という疑問が持ち上がる。

日本銀行は、すでに年間の国債買い入れ額は年間80兆円から60兆円程度に減額しており、そういう意味では国債買い入れは限界に来ているふしがある。その代替案として、現在は「マイナス金利」や「イールドカーブ・コントロール」をメインの金融政策にしているわけだが、米国や欧州のように出口戦略に対してはいまだに具体的な対応はない。

日本銀行は、以前から対応が遅れるので有名だが、今回も漫然とマイナス金利を続け、イールドカーブ・コントロールを続けるのかもしれない。とりわけ、いまだにどの国の中央銀行もやったことのないETFの買い入れは、その副作用が心配だ。

副作用がどんな形で出るのかはわからないが、いずれにしても漫然と金融緩和策を続ける根拠となっているのが、消費者物価指数が目標に届かない、という理由だけではないのか。政府の統計を鵜呑みにすれば今は戦後2番目の長さの好景気を続け、失業率も24年ぶりの低さとなる2.7%(11月、完全失業率、季節調整値、総務省)、有効求人倍率も44年ぶりの高い水準になっている。

これだけ好景気だというなら、物価が上昇しない原因をきちんと分析して、その結果を公表するのが望ましいだろう。日本銀行が金融緩和の手綱を緩めようとしない説明も、物価だけを根拠にするのでは不可解に映る。

確かに、この10年、日本の物価はある部分では大きく値下がりしたものも多い。パソコンやテレビ、デジタルカメラなどのデジタル製品は技術革新のおかげで安くなり、冷蔵庫や洗濯機などの白モノ家電も高機能になった割には値が上がっていない。価格下落は技術革新に伴うケースが多い。

海外生産の衣料品や海外の牛肉なども全体的に値下がりしたといっていいだろう。これは、円高の恩恵を国民が享受してきた、と言っていい。とりわけ、食料品などの生活必需品の大半は、円高の恩恵を受けてきた。

また、インターネットの普及で情報などは「無料」で提供されるのが当たり前になった。高齢化社会が急速に襲い、多くの高齢者が老後に不安を覚えて、消費を手控えてしまっているのも大きな原因だろう。

そもそも日銀が実施した「目標2%のインフレ率達成」という政策そのものは必要だったのだろうか。ただ世の中のマネーの流通量を増やせば景気が回復する、というリフレ派の考え方そのものはすでに結論が出ているのではないか。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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