経済統計で見える「北朝鮮」の知られざる実像 人口は韓国の半分、1人当たりGNIは22分の1
日本では食糧不足のイメージが続く北朝鮮の農業生産はどうか。2016年の食糧作物生産量は482万トン(前年比31万トン増)、韓国は471万トンとほぼ同レベルだ。そのうち、北朝鮮のコメ生産量は222万トン、トウモロコシは170万トンだ。北朝鮮が自給できる食糧作物生産量は550万~600万トンと言われている。食糧作物生産量のうち韓国はコメがほぼ9割を占めるが、北朝鮮ではトウモロコシも主食の一つとされている。
2017年秋から山形県や秋田県、石川県などの海岸に漂着する北朝鮮漁船が相次いでいる。北朝鮮の漁獲量をみると、2016年は101万トンで前年の93万トンより増えている。だが、韓国は325万トンで、3分の1の規模だ。日本は465万トン(2015年)水準である。
鉱工業統計では北朝鮮が優位に
北朝鮮が韓国を上回る数少ない経済データは、鉱工業関連統計だ。たとえば石炭生産量は北朝鮮が3106万トン(前年比357万トン増)、鉄鉱石は53万トン(同3.4万トン増)と、韓国の173万トン、4.5万トンよりはるかに多い。
朝鮮半島はもともと現在の北朝鮮である北部地方に地下資源が多く眠っている。また、1990年代後半からの経済難や自然災害で鉱山の生産活動が萎縮していたが、2010年以降、緩やかな経済回復を追い風に掘削など生産設備の更新も進んで生産活動が徐々に正常化したことが、増産の背景となっている。
だが、経済活動の基本となる電力生産量がふるわない。北朝鮮の発電設備容量は766万キロワットで韓国の14分の1。発電量も239億キロワット時で、韓国の23分の1水準だ。前2015年はそれぞれ743万キロワット、190億キロワット時で増加傾向にはあるが、十分な経済活動を行うには足りないことは、北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長も認めている事実だ。
2017年10~12月に平壌を訪れた中国人や在日コリアンらに話を聞くと、「停電もほとんどなく、電力事情は悪くはなかった」と口をそろえる。最も簡単に入手できる石炭を燃料とする火力発電所を増やし、電力供給量を増やしていることもある。最近では、「石炭から原油を生産する石炭液化を積極的に進めている」という話も出てきた。しかし、経済制裁で原油やガソリンなどの石油関連製品の輸入が強く制限され始めており、2018年以降、発電事情がより厳しくなるとの見方が多い。
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