「孤独を感じてる人」が直面する深刻なリスク 人に囲まれていればいいわけじゃない

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この研究では、孤独は人々の社会的なつながりや活動、社会経済的な地位の程度に伴うものではなかった。しかしドノバンらは、国際老年精神医学雑誌に昨年発表した別の研究で、50歳以上を対象に12年わたって調査したところ孤独と認知機能の悪化に関係があったと 明らかにしている。一方、当初から認知機能が低くても、孤独感の増加にはつながっていなかった。

うつ状態は比較的軽度なケースも含め、孤独よりも認知機能低下のリスクに大きな影響を及ぼすこともわかっている。

孤独や孤立の対処法

「深刻なうつ症状が、正常な認知機能から軽度の認知機能障害へ、軽度の認知機能障害から認知症への進行に関係していることは、有力な証拠がある」と、ドノバンらは述べている。また孤独は、軽度なうつとより重度のうつと同じように、脳に病的な影響を及ぼす可能性があるという。

こうした研究が提起している問題が、認知機能の低下やその他の健康への悪影響を防ぐために孤独と社会的孤立にどのように対処すればよいのかということだ。

孤独を感じているか社会的に孤立している人は、講義を受けたり犬を飼ったり、ボランティア活動やシニア向けのグループに参加するのがよいといわれている。

英国では、ボランティアが孤独を感じている人と一対一で定期的に面会する「ビーフレンディング(Befriendig)」と呼ばれるプログラムがある。こうした取り組みは、うつや不安の程度をやや改善すると見られるが、長期的な効果は不明だ。14のビーフレンディングの取り組みを調査した研究では、うつの程度や生活の質、孤独の程度、自尊心や幸福にもたらす大きな効果は見られなかった。

ウエストバージニア大学看護学部のローリー・シークが開発したプログラム「リッスン(Listen)」は、孤独に打ち勝つための認知行動セラピーの一種だ。孤独を感じる人が少人数のグループになって、人間関係に望むものや自らのニーズ、考え方の傾向、行動について追求するもので、2時間にわたるセッションを5回行う。

しかし、こうしたアプローチが全米にまん延している孤独な大人たちの認知を再構築できるかどうかは不確かだ。

(c)2017 The New York Times News Services 

(執筆:Jane E. Brody記者、翻訳:中丸碧)

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