三菱自の再建最終章、カギ握る御三家の思惑 御三家からの追加支援も調整。経営再建は最終章
額面割れの買い取り
ただし、公募増資だけで完全に優先株を処理することは難しい。
御三家合計の持ち株比率は約34%。三菱自の信用を担保しているこのスキームを維持するために、優先株の一部は普通株転換がなされるが、最低でも1500億~2000億円の増資は必要だろう。この金額なら不可能ではない。それでも、公募増資で調達する全額を優先株処理に充当するシナリオが資本市場に受け入れられるかは微妙だ。
そこで額面を下回る価格での優先株買い取りで、御三家と交渉が進められている。これが実現すれば、三菱自にとっては願ってもないが、話は簡単ではない。「御三家の中でもスタンスの違いがあるからだ」(関係者)。
「優先株引き受けは、(三菱自支援で)そもそも経済合理性を超えたものだった」(御三家トップ)とはいえ、額面を下回る価格で三菱自に売り渡せば、優先株保有者は損失を余儀なくされる。これは優先株の大半を保有する銀行が被る割合が圧倒的に大きい。優先株への配当は一度も行われないまま、追加で損失を引き受けるとなると、自らの株主への説明に苦慮しそうだ。
公募増資の金額にもよるが、御三家筆頭で三菱自の生みの親である重工は、持ち分法適用となる15%超を維持するには優先株を転換するだけでは足りなくなる可能性が高く、追加で普通株を取得する必要がある。
商事は優先株の保有数や維持すべき持ち株比率からいっても追加負担は限られている。一方、東南アジアで自動車を販売するなど、ビジネス上のつながりが深い。三菱自の事業展開にプラスになるならば、優先株の処理案に反対する理由は少ない。
普通株への復配を何としても実現したい三菱自の執念が、無理筋にも見える案に現実味を帯びさせている。だが、三菱自が御三家の調整とともに、巨額の公募増資を正当化するシナリオを描くのは容易ではない。
最終コーナーを曲がり切れるのか。ゴールまでの道のりには波乱がありそうだ。
(撮影:大滝 誠 =週刊東洋経済2013年9月28日号)
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