三菱自の再建最終章、カギ握る御三家の思惑 御三家からの追加支援も調整。経営再建は最終章
ただ、問題がある。危機を救ったあの優先株の存在だ。御三家と三菱UFJ信託銀行を除くグループ各社は昨年8月以降に優先株をすべて普通株に転換したが、御三家と信託の4社は額面でまだ約3800億円分の優先株を保有している。
本来、優先株は09年度以降に額面に対し5%の配当を支払う必要があったが、これまで配当原資がなく実施できずにいた。普通株の復配を果たすには当然、優先株へも配当しなければならない。現状なら優先株向けだけで約190億円も必要だ。
今期、もくろみどおりの利益をたたき出せば、優先株と普通株への同時配当は可能だ。しかし、それでは内部留保が積み上がらず、この先の投資余力が落ちる。復配と再建完了を宣言するためにも、経営危機の象徴である優先株の処理を探ってきた。
処理のために残された選択肢は?
処理の方法については、いくつかの選択肢があった。たとえば、ほかの保有者のように普通株へ転換すること。だが、大量に優先株を保有する銀行の出資比率が、原則5%の出資規制ルールに抵触してしまう。普通株に転換後に市場で売却するのは株数が多すぎるために難しい。
一時期はほかの自動車メーカーと資本提携を結ぶことで、優先株処理も進める案もあった。しかし、10年には仏プジョー・シトロエンとの資本提携交渉が破談、その後のいくつかの交渉もまとまらなかった。「現時点で資本提携は検討していない」(三菱自幹部)。
そして、現在有力となっているのが公募増資によって優先株の処理を進める案だ。銀行が保有する優先株の処理には買い入れ消却が必須となるが、それには資金調達と資本増強が欠かせない。公募増資ならそれを同時にクリアできる。昨年秋以降のアベノミクス効果による株式市場の好転も追い風となり、今春から公募増資の可能性を探っていたが、ここに来て方向性が煮詰まってきた。
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