三菱UFJフィナンシャル・グループがモルガン・スタンレーに最大9000億円の巨額出資へ

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三菱UFJフィナンシャル・グループがモルガン・スタンレーに最大9000億円の巨額出資へ

三菱UFJフィナンシャル・グループが米投資銀行のモルガン・スタンレーに10%~20%の持株比率で出資を行うことで合意したと発表した。取締役も派遣する。出資は普通株での増資に応じる形で行い、5000億円以上、最大9000億円になる見通し。この数字は8月末の純資産額を基にしたものとのこと。モルガン・スタンレーの現在の時価総額300億ドルからすれば、20%は6000億円強だが、株価が乱高下しており、資産査定後の純資産を基準に買収価格を決めるという。増資の具体的なスケジュールや1株あたりの金額はこれから詰めるとしているが、出資比率は20%に近い数字になる模様で、筆頭株主となり、モルガン・スタンレーを持分法適用会社とする可能性が高い。

モルガン・スタンレーは、ゴールドマン・サックスに次ぐ全米2位の投資銀行で、世界各地の拠点で5万人以上の従業員を擁する。米国の金融市場の混乱、とくに先週15日のリーマン・ブラザーズの破綻で、ゴールドマン・サックスともども株価が大幅に売られていた。米政府は、不良債権買い取り機関の設立を発表したが、加えて、21日夜(日本時間22日朝)、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーについては、FRB(米中央銀行、連邦準備制度理事会)が両社の銀行持ち株会社への移行を認可すると発表していた。

三菱UFJ側に出資への打診があったのは、この話と並行してということのようだ。銀行持ち株会社になれば、FRBから受けられる資金繰り支援が広がるうえ、預金保険機構による保護の対象になる。一方、銀行として、より厳しい規制・監督に服することとなり、BISによる銀行としての資本規制(バーゼルII)を適用されるため、資本増強が課題となる。

モルガン・スタンレーは三菱UFJの引き受けにより資本増強を図る一方、三菱UFJ側としても、銀行持ち株会社への移行によるモルガン・スタンレーのポジションの安定化が出資決断の一つの決め手になったという。

投資銀行の証券化ビジネスモデルや、負債比率の高いレバレッジで投資収益を膨らます手法は、市場崩壊に見舞われているが、三菱UFJはモルガン・スタンレーの各国政府や世界の大企業、投資化の顧客基盤や、各種の証券引き受け、売買、運用業務、財務やM&A、資産運用のアドバイス能力などに価値があると判断し、このようなビッグネームとの提携は二度とない投資チャンスと判断したようだ。

モルガン・スタンレー側としてみれば、提携相手としてみた場合に、米国の商業銀行では、既にベアー・スターンズを飲み込んだJPモルガン・チェース、メリルリンチを飲み込んだバンク・オブ・アメリカのほか、財務が悪化しているシティバンクしか大手クラスの銀行は残っていなかった。次のサイズのワコビアとの統合交渉も行っていたものの、ワコビアは地銀クラスであり、また、サブプライムで無傷ではない。三菱UFJのほうが地域的にも広がりがあり、財務面でも余裕があるとの判断が働いただろう。ちなみに、三菱UFJにとっては巨額投資ではあるが、自己資本比率は1%ポイント程度しか低下しない見通しという。
(大崎明子 =東洋経済オンライン)

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