灘校生にとっての「偏差値70」とは? 灘中学・高等学校 和田孫博校長に聞く

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偏差値70は”偏っている”!

――生徒には普段どんな話をしていますか?

いろいろな話をしますが、やっぱり灘の生徒は優秀な子が多い。模擬テストとかで偏差値70を取る生徒もざらにいます。もし、あなただったら、そういう生徒になんて声をかけますか?

――「よくやった!」とかじゃないんですか?

それもそうですが、あまり褒めてばかりいると、勉強という価値観だけに傾倒してしまうかもしれない。ですから、生徒たちには「偏差値70というのは血圧で言うたら、今すぐ血圧降下剤を飲まなアカンくらいの数字。それくらい“偏ってる”んや」と。これは、脳科学者の養老孟司先生のおっしゃっていた言葉にヒントを受けました。確かに偏差値70はすごいことかもしれませんが、だからといって“自分が優秀だ”なんて勘違いしてはダメだ、あくまで“個性”のひとつなのだということですね。

せっかく灘まで来たのだ。どうせなら実際の生徒にも話を聞いてみたい。先生にお願いしたところ、急な申し出にもかかわらず、大森亮君という生徒を紹介してくれた。
大森君は国際物理オリンピックに出場した灘校きっての物理好きだ。国際物理オリンピックとは物理の世界一を目指して高校生が集う国際コンテストのことで、10日間かけて全世界から集結した俊英が、理論や実験問題など、多角的な視点から物理のスキルを競い合う。日本からも毎年5人が選出され、2013年は5人のうち3人が灘の生徒だった。彼はその大会で銀メダルを受賞した”物理界のスーパー高校生”だ。経歴だけ見れば、”超天才”のように見える彼でも灘の中では大きな挫折を味わったという。

 ”物理界のスーパー高校生”が語る灘とは?

――高校3年だよね。受験のこととか考えている?

そうですね。漠然とは考えています。中1から、あくまでこつこつとやっていくイメージです。本格的に受験のことを考え始めるのは高3からですね。灘では学年で大体100番以内にいれば東大は安泰という目安があります。なので、東大を目指している僕としてはまず、それくらいにいれば大丈夫かな、と思っています。

――なるほど。6年前に入学したときはいかがでしたか?

一応、小学校時代は勉強を頑張っていたので、少しは「やれる」という自信はあったのですが、やっぱり灘に入るとはるかに頭のいい人がいっぱいで……。入学当初はテストの点数とか気にしていましたけど、上には上がいる、というのを痛感しました。勉強だけじゃなくて、音楽ですごい人もいますし、スポーツですごい人もいる。そういう人たちと接しているうちに「俺、ダメかもしれないな……」と思っていた時期もありましたが、とにかくいろいろ手当たり次第挑戦してみました。

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