灘校生にとっての「偏差値70」とは? 灘中学・高等学校 和田孫博校長に聞く

✎ 1〜 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 17
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

”中島らも”的な人材が育まれる土壌

――なるほど。受験エリートではダメなわけですね。

そうですね。「お勉強」的な価値観はあまり灘にはないと思います。世間から天才とか、神童とか、言われているかもしれませんが、イメージで言うと、全方位に能力を発揮するよりも、どこか一点飛び抜けている生徒が多い。

校訓としては「精力善用・自他共栄」を掲げています。どういう意味かと言うと、精力善用とは努力をして、自分の個性を存分に伸ばすという意味です。一方で、自他共栄とは、自分の個性を伸ばすことだけに執着するのではなく、他人の個性も尊重しなければならない。そういうことも重視しています。

自分の個性を磨き、他人の個性を尊重するという校風なわけですから、勉強ができないから下に見られるということもないと思います。私の同級生に中島らも君がいます。彼なんか典型的で、勉強以外の面で大きく花開きました。授業中もなんかオモロいことばっかりやっていて(笑)。彼みたいな人材は「灘ならでは」だと思います。灘には、そういう面白い人材が育まれる独特の“ゆとり”がありますね。

――確かに。最近だと文化祭で披露した「なだいろクローバーZ」の様子がネットで「ピンクの生徒がかわいい!」と、話題になりましたね。あれを仕掛けたのもTehu君という個性豊かな生徒でしたよね。

ええ。そうした取り組みができる遊び心も大事ですよね。「なだクロ」はかなりOBからの問い合わせがありましたね。

――やっぱり、お叱りの?

いえいえ、「面白いやつおるやんけ!」とか「やっぱ灘はええなー」とか、大半がそんな言葉でした(笑)。

――優秀でいて、独特のゆとりもある。どうしてこういう校風が醸成されるのでしょうか。

灘の「精力善用・自他共栄」という校是は創設者の嘉納治五郎先生が定めたものです。柔道家として有名な嘉納先生ですが、彼は当時としてはまれにみる国際人なんですよ。もともとは教育者で文部官僚でした。それにアジア初のIOC委員も務めました。結局、開催はされなかった1940年の東京五輪招致の際にも、流暢な英語演説を行ったことでも有名です。

次ページ 3年間で小説を1本読む国語の授業
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事