超難関!インド系インターに娘を入れた親心 元リクの母、元野球選手の父のサバイバル教育

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心配した亜紀子さんが学校の先生に相談すると「環境が変わると、そういうことはあります。そういう時は親が子どもと接する時間をもっと増やしてあげて」とアドバイスされた。さらにインドの友人にも相談してみると「親は子どもを学校に預けてお任せというわけにはいかない」と教えられた。

その後、本人も異国の教育環境で頑張った結果、英語のコミュニケーションはスムーズになった。夏休みを迎えて「友達のいる学校に早く戻りたい」と話すほどだ。

とはいえ、両親ともに忙しい。父親の誠さんは、タイや中国に選手指導のため派遣された経験を持ち、アメリカ、台湾、韓国、ベネズエラといった様々な国から来た選手たちと交流を持つ。球団のマネジャーという仕事柄、出張も多い。母親の亜紀子さんは前述のような仕事で、24時間世界とつながっている。どうすれば、グローバルに働く忙しい親は、学齢期の子どものメンタルや学習サポートの時間を取ることができるのか。

「小1の壁」と呼ばれそうな課題を解決したのは、亜紀子さんの働き方だ。基本的には在宅勤務をしており、自宅のダイニングテーブルと書斎がオフィス代わり。仕事と家庭が統合されているので、夕方、子どもが帰宅する時間帯にいったん仕事を切り上げ、夕食を共にしながら子どもの話を聞き、その後、子どもが宿題をする傍らで仕事を再開することも可能だ。

世界30カ国、120人の関係者とやり取りし、カタール・ドーハのレストラン、サウジアラビア・リヤドのホテルのプロジェクトを手がける亜紀子さん。グローバルな仕事と子育て・教育が、自宅ダイニングテーブルをハブにして、つながっている。

こういう働き方が認められるのは、先に記したように、亜紀子さんが自分で自分のキャリアを切り開いてきたからだ。日本文化の発信をしたいと決めたら、大企業の正社員から皿洗いのアルバイトへの転身も辞さない。目先の肩書きにまどわされず、やりたいことへの投資を怠らなかったからこそ、その能力や仕事ぶりが認められ、自由な働き方を手に入れることができた。

グローバルなキャリアを持ちながら、子どもの教育もベストな選択を考える。難しそうだが、本気でやりたくて、自分で切り開く覚悟があれば、できますよ、と亜紀子さん・もあさん母娘は教えてくれる。必要なのは、明確な目的意識とサバイバル精神だ。

(撮影:大澤誠)

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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