東レ・三菱マテ、「改ざんドミノ」が起きたワケ 相次ぐデータ改ざんは氷山の一角なのか
東レによると、データ書き換えは、規格値からの乖離が小さい製品だけだったという。基準には満たないが使用上は問題ない場合、素材業界では納期などを優先して「特別採用(特採〈とくさい〉)」扱いで製品を出荷するケースがある。ただし、それは顧客企業の了解を得るのが大前提。今回のケースでは、正式な手続きを経ず、データ自体を書き換えていた。
「規格値との差異がわずかで品質上の異常レベルではない、という勝手な解釈が行われていた。特採はお客さんから承認を得る必要があるため、そうした作業の繁雑さから逃れたいとの思いもあったようだ」。会見に同席したTHCの鈴木信博社長は、品質保証室長によるデータ改ざんの背景をそう説明した。
社内での発覚から1年以上が経過した段階で、突如行われた緊急会見。同社は当初、法令違反や安全上の重大な問題には該当しないとの考えから、「外部には公表するつもりはなかった」(日覺社長)。
しかし、11月初旬にネットで匿名の書き込みがあり、『週刊文春』が事実関係を確認して記事の掲載を決定。雑誌で公になる前に、自主的に公表したほうがイメージダウンは避けられると判断し、会見に踏み切ったというのが真相のようだ。
詳細は報告書が出た後
「現在、弁護士を入れて調査中。詳細はその報告を待ってお話ししたい」。11月24日に開いた会見で、三菱マテリアルの竹内章社長は繰り返し語った。
三菱マテリアルで問題となったのも、子会社のデータ改ざんだ。三菱電線工業は航空機、自動車、電力機器向けシール材で、三菱伸銅は車載部品や電子機器向け銅製品で改ざんが行われた。三菱アルミニウムでも改ざんがあった。
特に目立つのは、三菱電線の取引先と数量の多さだ。2015年4月から2年半の間に出荷されたもので、顧客数229社、不適合の可能性があるシール材は約2.7億個(約68億円)に及ぶ。