「かつや」運営社がすかいらーくを訴えたワケ 飲食業界でいまだ止まない模倣合戦の本質
外食企業の海外フランチャイズ展開を専門に扱っているアセンティア・ホールディングス取締役の松本信彦氏はこう指摘する。
「看板は商標というルールで守られています。海外へのフランチャイズ展開を推進するうえで商標の扱いは極めて重要で、『からやま』は2014年に看板の標準文字配列の商標を取得していますが、看板の図柄(マーク)の商標は2017年3月の申請で取得が遅れました。標準文字配列と図柄の商標を同時に取得しておけば、今回の訴訟は避けられたのではないでしょうか」
すかいらーくの「からよし」が、不正競争防止法に抵触するかどうかは司法の判断を待たねばならず、現段階では予断を許さない。ただ、白地に黒いひらがな文字であしらった「からやま」「からよし」の店名、赤地に白抜きの文字で「からあげ(から揚げ)定食590円(税抜)~」「お弁当 お惣菜」と文字が並ぶ看板は、「よく知らない人なら2つのお店を混同してしまうかもしれない」と思う。
「かつや」も模倣されていると認識
実は法廷闘争にはなっていないものの、アークランドには、主力のとんかつ店「かつや」業態も、すかいらーくに模倣されているという認識がある。
アークランドは独自に開発したオートフライヤーを駆使して、1998年8月、神奈川県相模原市にとんかつ専門店「かつや」(ロードサイド店舖)の直営1号店を開店し、ヒットさせた。翌1999年7月からフランチャイズ(FC)展開を開始、2017年12月期の第3四半期末で直営・FCで393店舗展開し、低価格とんかつチェーン店として突出したブランドを築き上げてきた。
すかいらーくがその「かつや」を彷彿とさせる、とんかつ店「とんから亭」の第1号店を埼玉県草加市にオープンさせたのは2016年6月。テイクアウト専用コーナー(かつ弁)の併設、店舗・建物形状、「メニュー」(とんかつのグラム数=80グラム・120グラム)、商品名(梅・竹・ダブル)、コンディメントの割り干し大根のサービス、100円割引チケットの配布など、「かつや」を模倣したとみられる部分が多い。
これに限らず、新しい成功業態が出てくると、これを模倣した業態が出てくるのは、生き馬の目を抜く飲食業界の常だ。今回のように法廷闘争に発展するケースも少なくない。
代表例の1つが全品298円均一(当時全品280円均一)の「鳥貴族」が、秀インターワンが運営する「ジャンボ焼鳥 鳥二郎 全品270円均一」(当時)を訴えたケースだ。
鳥貴族は、看板や内装、メニューに至るまで何から何までそっくりだと、ロゴ使用中止を求めて秀インターワンを提訴した。大阪地裁で2015年4月に開かれた第1回口頭弁論で、秀インターワン側は、「鳥二郎が鳥貴族の営業形態の一部を取り入れようとする意思があることは否定しないが、飲食業界では数え切れないほどの模倣がなされてきた。あくまで自由競争の範囲内だ」と、開き直った。
これは事実上、「飲食業界のパクリ商法は当たり前だ」と主張したといえる。
加えて、秀インターワンは、「鳥二郎」の図柄・ロゴを商標登録していた。鳥貴族は特許庁に対し異議申し立てを行ったが、一度登録されたものが簡単に覆されるわけもなかった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら