日本の「リベラル」は、このまま衰退するのか 立憲民主党は自民に対抗する改革路線を示せ

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従来、保守とリベラルの対抗軸は「保守=既得権を守る、金持ち優遇・弱者切り捨て、憲法改正など。リベラル=既得権見直し、金持ち課税強化・弱者救済、護憲など」といったくくり方をされてきた。

ところが、小泉純一郎氏が首相時代に郵政民営化を進めたことにはじまって、保守派による「既得権打破」がアピールされ、リベラル派には「現状維持」というレッテルが張られるようになってきた。佐伯氏が指摘する安倍首相の「変革」も、そうした流れに沿うものだ。

しかし、小泉、安倍両氏の「変革」は本物だろうか。小泉氏は「郵政を民営化すれば、社会保障も外交も良くなる」と胸を張ったが、実際にはそうならなかった。小泉政権下では不良債権処理などが進んだものの、消費増税には手がつけられなかった。安倍氏にしても、2012年に政権に復帰してから5年が経つが、現在の日本が抱えている最大の問題である財政再建や社会保障について抜本的な「変革」が行われたわけではない。保守が既得権打破勢力であるというのは、政策の実質というより印象の問題ではないだろうか。

排他主義が広がる中、リベラル派の再興が必要だ

では、リベラル派はどうすればよいのか。まず、既得権にしがみついているというイメージを払拭することが必要だ。国会議員や官僚の特権を洗い出して「身を切る改革」を進める。労働組合を含めて、さまざまな業界団体の権益にメスを入れる。「弱者救済」の名で行きすぎた支出があれば、大胆に見直す。憲法改正論議にも、逃げずに正面から向き合う。そうした「変革の姿勢」を見せることで、保守派との「改革競争」をリードすることが何よりも求められる。

かつての社会党は、自民党との対抗軸として「護憲」を掲げて自民党政治の暴走を阻んだが、労組などの支持基盤にとらわれて、経済や社会保障の改革路線を打ち出せなかった。永田町での合従連衡に巻き込まれて、先細りとなった。

立憲民主党の枝野代表が「永田町の中の議論ではなく、国民の目線での議論が大事だ」というその方向性は間違ってはいないだろう。ただ、ある民主党の代表経験者が「立憲民主党が改革に正面から取り組まず、反自民の旗印を掲げているだけでは政権は取れない」と言うように、自民党に対抗する改革路線をどう打ち出していくかが、今後の課題である。

リベラルは立憲民主党の専売特許ではない。民進党出身者が多い希望にも、リベラル派はいる。自民党でも、池田勇人、大平正芳、宮沢喜一各氏らが率いた宏池会の会長を務める岸田文雄政調会長は、「リベラル派」を自認する。公明党・創価学会にも「立ち位置は宏池会とあまり違わない」という幹部は少なくない。

グローバル化が進んで経済の格差が拡大し、国際的には排他主義が広がる中で、格差縮小や国際協調主義を掲げるリベラル派が果たすべき役割はむしろ、大きくなっている。リベラル派には再興の努力が求められる時である。

星 浩 政治ジャーナリスト

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ほし ひろし / Hiroshi Hoshi

1955年生まれ。東京大学教養学部卒業。朝日新聞社入社。ワシントン特派員、政治部デスクを経て政治担当編集委員、東京大学特任教授、朝日新聞オピニオン編集長・論説主幹代理。2013年4月から朝日新聞特別編集委員。2016年3月からフリー。同年3月28日からTBS系の報道番組「NEWS23」のメインキャスター・コメンテーターを務める。著書多数。『官房長官 側近の政治学』(朝日選書、2014年)、『絶対に知っておくべき日本と日本人の10大問題』(三笠書房、2011年)、『安倍政権の日本』(朝日新書、2006年)など。

 

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