独立して失敗する人は期待値がわかってない どうせやるなら勝率の高いゲームをやろう
2016年には、ソフトバンクが英国の半導体設計会社のアームを3兆3000億円という過去最大規模の巨額で買収したことが話題になりました。これももちろん、将来にわたって成長ドメインに居続けるための戦略です。
今後のIT業界で最も大きな市場拡大が見込まれるのは、やはりIoTです。コンピュータやIoT分野においては、デバイスの開発に約2年かかりますが、そのスペックを決めているのは半導体設計会社です。よって、アームを手に入れれば、この業界の2年先が見通せるということになります。勝負に勝つために、これほど有利なサイコロはありません。
勝率の高いゲームしかしていない
アームの買収に限らず、孫社長はつねに「先を見通すための情報」を手に入れることで、サイコロを自分にとって有利な形に変えてきました。
ソフトバンクがいち早く米国のヤフーと組むことができたのは、当時米国最大のIT情報メディア企業だった「ジフデービス」や、世界最大規模のコンピュータ見本市だった「コムデックス」を買収し、業界の最新情報が自分の手元に集まってくる体制を作ったからです。
だから、まだ創業間もなかったヤフーの存在を知ることができたし、先物買いで出資する決断もできました。これは要するに、「サイコロのどの目に賭ければ儲かるか」を先読みできてしまうということです。
アームの買収額の大きさに世間は驚きましたが、あれも孫社長にとっては「期待値をはるかに超える」という確信があってのこと。支払った3兆3000億円を超える結果が得られるとわかっているから、「安い買い物だった」と本気で言えるのです。
もともとIoT分野は年15%の成長が見込まれているうえに、その中にいるどのプレーヤーよりも有利な条件でサイコロを振ることができるのですから、孫社長が持っているサイコロは、6面のうち4面や5面が当たりの「1」が出る仕掛けになっているようなものでしょう。
ソフトバンクは外から見ると無謀なチャレンジをしているように思われがちですが、実はものすごく勝率の高いゲームしかしていないのです。
このように、「大数の法則と期待値」は、大きな意思決定をしなくてはいけない場面で役立ちます。起業の判断だけでなく、たとえば自社で新商品を開発する場合にも、将来起こるシナリオを想定することができるはずです。
過去の経験から見て、自社の新商品が成功する確率は10%、同じジャンルで売り上げトップの商品の販売実績が10億円前後だとします。
すると、この場合の期待値は、「10億円×10%=1億円」となります。
こうして数値を把握すれば、未来を具体的にイメージできます。また「期待値が1億円なら、予算はいくらかけていいか」といったコスト計算の目安もできます。もし「1億円では少なすぎる」と思うなら、「売り上げを10億円にしてトップを獲得するには、サイコロをどのように変形させればいいか」という戦略も考えられるでしょう。
「大数の法則と期待値」は、不確実な未来を想定し、自分にとって都合よくコントロールするための道具になるのです。
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