日本でボジョレーヌーボーが力を下げた理由 あえてワイン通を狙わない巻き返し策が始動

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かつてのブームほどの勢いはないものの、イベント的ニーズとしてはそこそこの盛り上がりが期待できるのがボジョレーヌーボーの魅力でもある。

日本に輸入されたボジョレーヌーボーの数々。全体では2700もの生産者により作成されている(写真:筆者撮影)

高級気質のワインと一線を画すのが、ボジョレーヌーボーでもある。そもそも通常のフランスワインの出荷日が12月15日と決められている中、早摘みに適した品種の地域は11月の第3木曜日に出荷してよいと決められたものがヌーボーだ。

ヌーボーはボジョレーに限ったものではなく、ブルゴーニュヌーボー、マコンヌーボーなど数地域あるが、ボジョレーヌーボーがつくられる地域のガメイ種というブドウの出来不出来で、その年のフランス全体のワインの状態がわかる。

通常のワインは熟成させるほどに美味しさが増すといわれている。そこにヴィンテージという概念が生まれ、何年、何十年と寝かせるうちに、1本数十万円、場合によっては数百万円単位の品が生まれる。

早く飲んだほうが美味しい

気軽にボジョレーヌーボーと料理を味わえるイベントも開催(写真:筆者撮影)

一方、ボジョレーヌーボーのガメイ種は逆。早く飲んだほうが美味しい品種だ。収穫された年のうちに味わうのがベストで、1年も置いておいたら美味しさが極端に下がってしまう。よってボジョレーヌーボーは「お祭り気分」で、ワイワイ飲むのに適している。

価格もアッパークラスの人々が好むタイプより、ずっとリーズナブルだ。ほとんどが2000~3000円台。中には「タイユヴァン」セレクトの「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー ラ・グランド・キュヴェ [ボックス付]」1万0800円(税込)なども存在するが、稀だ。

ボジョレーヌーボーには、通常タイプとヴィラージュといって上質な畑で作られたタイプの2種類あるが、高級スーパーマーケットの「北野エース」でも同様だ。ヴィラージュよりさらに上質なクリュという地区の「ドメーヌ・ビュリア」で特別に作られた「ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーボー」もフルボトルで2689円(税込)。近年は、ハーフボトルサイズも登場し、スーパーやコンビニでも気軽に購入できるようになってきている。

ちなみに今年のボジョレーヌーボーの完成度は、より凝縮感のある仕上がりと評判だ。春に霜が降り、夏に雹の嵐があった関係で、収穫量としては減少したが、残った果実は却って、栄養分を得るために根をいっそう土中深くまで張らなければならなかった結果、高品質で凝縮され、酸とのバランスも良く、「豊満で朗らか、絹のようにしなやか。しかもフレッシュで輝かしい」感じに仕上がったようだ。

立ち飲みなどの居酒屋でも、この時期、ボジョレーヌーボーがメニューに加わることが多い。そもそもワインは古代から「serva potio」(労働者の飲み物)として浸透していた。そんな原点に立ち返り、肩ひじ張らずに、気軽にボジョレーヌーボーを楽しむのが良いだろう。

はんつ遠藤 フードジャーナリスト

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はんつえんどう / Hantsu Endo

1966年東京都葛飾区生まれ。東京在住。早稲田大学教育学部卒業。海外旅行雑誌のライターを経て、テレビや雑誌、書籍などでの飲食店紹介や、飲食店プロデュースなどを行うフードジャーナリストに。ライターとして執筆、カメラマンとして撮影の両方を1人でこなし、取材軒数は8000軒を超える。『週刊大衆』「JAL(Web)」などに連載中。また近年は料理研究家としてTVラジオ雑 誌などで創作レシピを紹介している。著書は『はんつ遠藤のうどんマップ東京・神奈川・埼玉・千葉』『おうちラーメン かんたんレシピ30』『おうち丼ぶり かんたんレシピ30』『全国ご当地やきとり紀行』(以上、幹書房)など。

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