DMMがあの「CASH」を70億円で買収するワケ 社員6人のスタートアップのどこが凄いのか

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インタビューに応じる光本CEO(筆者撮影)

——そこでDMM.comの出番がくるわけですね。

片桐:「なんか騒ぎになってるなあ」と思って横から見ていたんですよ。いいサービスなので「出資させてくれないかなあ」と。

光本:そしたら10月5日に亀山(敬司)会長から夜中の1時58分に、こんなフェイスブック・メッセンジャーが来たんです。『CASH売って〜』『無理?』。

それでとりあえず、一緒にご飯を食べに行って。1カ月後にはDMMグループに入ることが決まりました。

チームを買う感覚で買収

——今年の1月に片桐さんが社長になってから、DMM.comの買収のペースが上がっています。

片桐:社長になって最初の数カ月は開発手法を変えるとか企業文化を作るとか、そういうことをやろうと思ったんですが、それって結果が出るのに最低でも3年はかかる。だから、「事業開発も並行してやろう」と考え方を変えたんです。光本さんみたいに、できる人とそのチームを探して、それを全力でサポートする。出来上がったサービスを買うというより、チームを買う感覚です。

でも光本さんたち、経営者にロックアップ(買収から一定期間は経営陣が辞めない約束)はかけていません。やる気をなくしてしまったら、引き止めても無駄ですから。

——光本さんが買収に応じた理由は?

光本:DMM.comって「現代のクールな総合商社」だと思うんです。スタートアップに足りない組織や資金や物流機能を持っていて、全面的に支援してくれるから、力のあるスタートアップがどんどん集まってくる。意思決定もものすごく早くてクールです。

片桐:買収した会社の経営者、チームを全力でサポートしていく。そうやって強いチームがたくさんできることがDMMグループの強さになっていくんだと思います。亀山さんは「CASHで買い取ったスマホをアフリカで売るぞ~」と張り切っています。

大西 康之 ジャーナリスト

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おおにし やすゆき / Yasuyuki Onishi

1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』などがある。

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