外国人が心底惜しがる「日本の新幹線」事情 技術は世界一、ではサービスは?

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日本政府は観光戦略を実施しています。これまでの記事で繰り返しご説明してきましたように、人口減少で労働力人口が半減していく日本において、移民政策に頼らずに地方経済を活性化させていくという意味で、「観光」は極めて重要です。官民が一丸となって取り組んでいかなければいけない戦略です。

皆さんも覚えがあるでしょうが、いまや異国の地での観光に「ネット」は欠かすことができません。ネットで観光スポットやレストランを検索して、ネットで移動経路を確認して、記念写真はその場でネットに上げて、祖国の家族や友人とシェアをします。

ですから日本政府としても地方自治体としても、ネットでの観光情報の発信、そしてフリーWi-Fiの整備に力を入れてきました。観光庁が実施した調査では「フリーWi-Fiが少ないこと」が「もっとも困ったこと」の一つとして挙がっていたからです。政府や自治体は当然、多くの訪日外国人が利用する新幹線にも、そのような整備をお願いしてきました

外国人観光客にとって、新幹線での移動時間は、行き先にどのような観光名所があるのか、どういうお店があるのか、どういう土産物屋があるのかという情報収集をするには最適だからです。しかし、フリーWi-Fiが整備されていないので、外国人観光客は新幹線の移動時間を情報収集に充てることができないのです。

私もかねて整備すべきだと訴えてきましたが、JR東海はこれらの要請に応えずにきています

「検索してもらえない」のは大きな機会損失

2016年にJR東日本とNTTデータが共同で行った調査によると、広域移動をした約253万人の訪日外国人観光客のうち、中国人観光客の46%、アメリカ人観光客の38%が新幹線を利用していることが明らかになっています。昨年、訪日外国人観光客は2400万人を突破しています。

つまり、膨大な数の訪日外国人観光客に対して、さまざまな情報を発信する機会があるにもかかわらず、それができていないという状況なのです。

そのあたりについてどう思っているのか。JR東海は「いまはスマホ対応をしているからWi-Fiはいらないでしょう」「そこまでネットが見たいならルーターを使えばいい」とでも考えているのでしょうか。

しかし、海外でローミングしてネット接続をすると思いのほか高額になりますし、パソコンやタブレットを持ってきている外国人旅行者も多くいます。レンタルのルーターなどを持っている人もいますが、トンネルなどではまったくつながりませんし、それ以外の区間もつながりにくいです。

観光客は、新幹線に乗っている間はゆっくり見られるので、スクリーンが小さいスマートフォンよりは大きなスクリーンで見たいはずです。おカネと労力を投入したネット情報発信を1人でも多くの外国人観光客に届けるには、フリーWi-Fiの整備のほうが望ましいことは明らかです。せっかく大金を使ってつくったコンテンツを見るための手段が整備されないと、そのコンテンツが無駄になってしまいます。

このようにWi-Fi不要という結論になるのは、消費者軽視としか思えません。

JR東海にそのような傾向が強いのは、もう1つの問題点からもうかがえます。

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