シンガポール航空「空飛ぶ高級ホテル」の全貌 超大型機「A380」の最上級クラスを全面刷新
「新型シートには、プレミアムなフルサービスへの自信が込められている」。シンガポール航空のゴー・チュン・ポンCEOはそう強調する。世界の航空会社に先立ち、同社がA380の運航を始めたのが2007年。かつてない超大型機として注目を集めてから10年を経て、初めてのシートの刷新が行われた。
新型の開発が始まったのが2013年。エアバスと共同で実施した1000人規模の顧客調査や、上級マイレージ会員による試作品体験などを実施し、4年の時間を掛けて、ニーズに合ったシートを目指してきた。研究開発から、シンガポール航空が所有する19機のA380への設置作業までを含め、総投資額は8.5億米ドル(約952億円)に上る。
「今まではスイートの数が多すぎた」
需要動向を如実に表しているのが、スイートの数だ。実は旧型では1機あたり12室あったスイートを、新型では6室まで減らした。この理由についてプロダクト&サービス担当シニア・バイス・プレジデント(SVP)のマービン・タン氏は、「座席構成は世界中のマーケットに合ったものでなければならない。平均すると、スイートの供給は需要を上回っていた」と述べ、旧型の室数が過剰だったことを認めた。
顧客からの要望を踏まえて今回の刷新のテーマとなったのが、「よりプライバシーを高め、パーソナルな空間を作ること」。スイートに関してはシート以外でも、照明の設定を自分用に保存しておき、また別のフライトで同じ設定を再現できるなどの機能を備えた。
このテーマはスイートだけでなく、ビジネスクラスにも表れている。横1列ごとの座席の並びは左右の窓際に1つずつ、そして真ん中に2席となっているが、この2席の間にある仕切りが優れものだ。仕切りを上限まで上げると隣が全く見えなくなり、座席をフルフラットにして仕切りを下限まで下げるとダブルベッドのようになる。1人でも、2人組でも、それぞれのプライバシーを実現した。
ビジネスクラスの各席は扉付きの個室にはしていない。「ドアをつけてもスイートのように完全個室にはならないし、その分のスペースも取ってしまうためだ」(タンSVP)。その分座席のシェルを大きくし、「繭(まゆ)の中にいるような感覚」(同)を提供したいという。
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