決戦直前!ドイツの議会選挙の結果を占う 景気・経済観測(欧州)

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野党勢が結集して、政権交代を模索する可能性も残る(シナリオ3)。

その場合も、現在の支持率調査の結果に従えば、SPDと緑の党の2党が手を組んだだけでは過半数に届かない。左翼党を含めた野党3党が総結集すれば、政権奪取も視野に入ってくる。左翼党は旧東独の流れをくむ政党とシュレーダー政権下の労働市場改革に反発したSPDからの離党議員が合流した政党だ。州議会レベルでは、SPDと緑の党による連立に、左翼党が閣外協力する形で議会運営を行うケースもある。

8月下旬に行われたアンケート調査では、有権者の3割程度が投票する政党をまだ決めていなかった。選挙戦の終盤でSPDが追い上げてきたこともあり、選挙後の連立の組み合わせは極めて流動的だ。

金融市場が不安定化するケース

さらに、投票結果に影響を及ぼしかねないのが、反EUを掲げて3月に学者らが旗揚げした新興政党「ドイツのための選択肢(AfD)」だ。今のところ支持獲得は2~3%にとどまっている。だが、一般に支持率調査で新興政党の支持は低めに出る。選挙戦終盤でギリシャ3次支援が争点のひとつに上り、EU懐疑派の有権者がAfD支持に回る可能性もある。万が一、AfDが5%以上の票を集め、議席を獲得した場合、CDU/CSUとFDPを合わせた獲得議席が過半数を上回ることはますます困難となり、大連立や野党勢総結集の可能性が高まる。

CDU/CSUとFDPの獲得議席が過半数を上回った場合、両党は速やかに連立政権の樹立に向けた協議を開始することになろう。現政権と同じ連立の組み合わせで、政策面での立場も近いことから、連立協議は比較的スムーズに運ぶ公算が大きい。ただ、その場合も両党の獲得議席が過半数を大きく上回る可能性は低く、さらに連邦参議院でも過半数を確保していないため、野党勢に配慮した議会運営を強いられよう。

一方、FDPが5%ルールに抵触し議席を獲得できなかった場合や、議席を獲得できてもCDU/CSUと合わせて過半数を確保できなかった場合、連立協議は長丁場となることが予想される。前回大連立となった第1期メルケル政権の連立協議は2カ月以上に及んだ。SPDはCDU/CSUとの大連立のほか、緑の党や左翼党との野党勢総結集とを両てんびんにかけながら、党内外の意見集約を目指すことが予想される。連立協議が長引いた場合、政策協議が停滞し、レームダック化することは想像にかたくない。連立協議が固まるまでの間、金融市場が不安定化するおそれがある。

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