NHK職員が過労死、長時間労働は改善するのか 残業が「月80時間未満」で死亡に至る事例も

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脳・心臓疾患で2016年度に労災を認定された人のうち、残業が月80時間未満は14人(うち死亡9人)。過労死問題に取り組む弁護士の岩城穣委員は「もともとの健康状態や深夜勤務の回数などによっては、80時間未満でも過労死がたくさん起きうる。(過労死ラインを)少なくとも月60時間に引き下げるべきだ」と主張する。

政府は今年3月、働き方改革実行計画をまとめ、残業時間に罰則つきの上限を設ける方針を決定。原則として月45時間、年360時間を上限とし、特別の事情があっても、年720時間を超える残業は認めない。

かつ、繁忙期の特例措置でも、「単月で100時間未満、2〜6カ月平均でいずれも80時間以内」とする。過労死の認定基準に基づいて定められ、特例措置の適用は年6回を上限とする。

残業上限規制に反発も

しかし、この上限案に対しては過労死遺族から強い反発の声が上がる。「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表は「企業が『月100時間までの残業は容認された』と、とらえかねない。これまで抑制されていた残業が増えるおそれもある」と指摘。さらに、「過労死の認定基準が固定化されるのでは」と懸念を示す。

現行の過労死認定基準は2001年に設定されたが、旧基準は亡くなる直前1週間の仕事量が過密だったかどうかに重点が置かれていた。遺族の活動もあり、認定の対象を広げる方向で基準が緩和されてきた。

寺西代表は「現行の基準を根拠として残業規制を法制化すると、過労死の認定基準緩和が進まなくなる」と話す。

政府はこの残業上限規制を、国会審議を経たうえで、2019年度にも導入する方針だ。どうしたら血の通う対策になるのか。制度を定めるだけでなく、長時間労働の撲滅に向けた各企業の取り組みも求められる。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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