NHK職員が過労死、長時間労働は改善するのか 残業が「月80時間未満」で死亡に至る事例も

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未和さんの過労死が公表された10月、厚生労働省は2017年版の「過労死等防止対策白書(過労死白書)」をまとめた。

過労死や過労自殺(未遂を含む)として労災認定された件数はこの10年、200前後で推移するが、精神障害(心の病)に起因する割合が増加傾向にある。

過労死ラインを見直すべきとの声も

また、2010年1月〜2015年3月の5年間に認定された労災のうち、運輸業・郵便業が脳・心臓疾患の3割に上る。精神障害では、製造業と卸売業・小売業が全体の3割を占めた。

パートタイム労働者を除く一般労働者の年間総実労働時間は2000時間前後で、この20年近く高止まりの状況が続く。週20時間以上残業をする雇用者の割合は2016年に7.7%(前年比0.5ポイント減)と減少傾向ではある。だが、働き盛りの30代、40代男性では15%前後と、高い水準のままだ。

過労死等防止対策推進法が施行されてから3年。現在、過労死防止への国の責務を定めた大綱の見直し時期に入っている。厚労省は10月下旬に「過労死等防止対策推進協議会」を開催。過労死で家族を亡くした遺族からは、労働時間を適切に把握する仕組みの制度化など、実効的な取り組みを求める声が相次いだ。

他方、専門家からは過労死の認定基準、いわゆる「過労死ライン」の見直しを求める意見も出た。厚労省は脳・心臓疾患について、「発症前1カ月におおむね100時間、または2〜6カ月間に1カ月平均でおおむね80時間を超える残業をした場合、業務との関連性が強いと評価できる」とする。ただ、実際にはそれよりも短い残業時間でも過労死が起きている。

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