日本のメディアが見逃した「トランプの幸運」 アジア歴訪のタイミングで追い風が吹いた

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トランプ大統領に解任されたジェームズ・コミー前FBI長官も、在任中、クリントン財団の調査に乗り出していると、しばしばメディアで取り上げられた。元FBI長官だったミュラー氏も、在任中、「オバマ政権時代のロシア疑惑」に関して、当然、調査していてしかるべきだったとされる。

しかし、そのミュラー氏がFBI長官として、しかるべきアクションをとらなかったのではないかという疑いが、ここへきて特別検察官としての中立性について、さまざまな批判を呼んでいるわけだ。

トランプ大統領の「ロシアゲート」を追及しているミュラー特別検察官にとっては、ひょんなことで、かつての「オバマ政権時代のロシア疑惑」が浮び上がり、それがかえって自らの特別検察官としての中立性を問われるという形で飛び火してきた格好だ。

こうした中立性欠如の疑惑ないし批判報道に対して、ミュラー氏はいっさい反応せず、沈黙したままだ。本来、ミュラー氏はすぐに反論、反駁してしかるべきだ。米国市民社会の中で共有されている「法の常識」として、「沈黙は金」ではない。沈黙は黙認、自認を意味するからだ。

ウォーターゲート事件との比較はナンセンス

ミュラー特別検察官に「ロシア疑惑」が飛び火したことで、「ロシアゲート」の捜査対象になっているトランプ大統領にとっては、思わぬ追い風が吹いている。しかも、ミュラー氏がその降りかかった火の粉を、すぐさま振り払おうとしないことで、その立場をますます不利にする可能性がある。

ミュラー特別検察官には、2つの不透明性がある。1つは、この5月にトランプ大統領に突然解任されたコミー前FBI長官と親しすぎること、もう1つは、かつての「オバマ政権時代のロシア疑惑」捜査で手抜かりがあったかもしれないミュラー氏への批判報道に対して、完全沈黙していることだ。

コミー前長官の電撃的解任をめぐって米メディアは、一斉にリチャード・ニクソン元大統領のウォーターゲート事件を連想した。ニクソン元大統領は、事件を捜査中のアーチボルド・コックス独立特別検察官の解任を司法長官に命令したが、エリオット・リチャードソン司法長官はそれを拒否して辞任。それが発端となって、ニクソン元大統領は弾劾に追い込まれることになり、結局、大統領を辞任せざるをえなくなった。

その連想から米メディアは、6月中旬、トランプ大統領がコミー氏と親しいミュラー特別検察官をも解任するのではないかと報じた。米メディアが「第2のウォーターゲート事件」とあおったこともあり、トランプ大統領とミュラー特別検察官との関係は一時険悪だったが、すでに2人の関係は修復している。

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