籠城する「首都の女帝」に夢と希望はあるのか 小池氏、当面は都政に邁進でも、「次」に執念

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となると、若狭氏の言う「次の次」とは五輪後の解散・衆院選となる。小池氏にとって、東京五輪成功という実績を引っ提げて都知事を辞職し、国政復帰を狙う「最後のチャンス」というわけだ。小池氏自身が今回衆院選での希望の党結党を「長期戦略の第1ステップ」と位置付けていれば、選挙不出馬の謎も解ける。ただ、敗北して野党第1党にもなれなかった選挙結果は、小池氏の「大きな誤算」だ。だからこそ、いったん国政からは身を退き、都政での巻き返しに賭けるとみられているのだ。

五輪を迎えた時点での小池氏は68歳。「国政復帰して首相を狙えるぎりぎりの年齢」(首相経験者)となる。ただ、それまでに都政で都民の期待に応える実績を上げる一方、国政の足場となる希望の党が「政権を狙えるもう一つの保守党」として存在することが、転身の前提条件となる。しかし、現時点では「どちらの条件もクリアできる見通しがつかない」(小池氏周辺)のが実情だ。

"政界の女優"のままなら「次」はないが…

政治家・小池氏の人物像を描くべく取材を続ける気鋭の女性ノンフィクション作家は、これまでの取材結果から「小池氏は政界を舞台とする女優」だと分析する。計算しつくされたメデイアへの露出戦術や、さまざまな質問や批判に対する当意即妙の応答とカメラのファインダーを通じて見る者を引き付ける表情や仕草は、まさに政治家というより女優にみえる。しかし、「それでは所詮、政界のあだ花で、トップリーダーにはなりようがない」(自民長老)のは明らかだ。

今年、昼のテレビドラマで多くの高齢者の高視聴率を獲得したのが民放テレビの「やすらぎの郷」だ。年老いた芸能界の大御所がひそかにつくった芸能人専用高齢者施設を「最後の住処(すみか)」として集った元有名女優たちが織りなす悲喜こもごもの挿話が、高齢層の視聴者を虜にしたからだ。手がけた脚本家の意図は「女優は最後まで女優である」ことを描くことだったとされる。

「夢もチボーもない」といって一世を風靡したのは、前回東京五輪前後のテレビ創成期の芸能番組で人気を博した、東京ぼん太という芸人だ。作新学院の高校野球選手から、職業を転々として芸能界にたどり着いた苦労人。濃い緑色の唐草模様の風呂敷包みを背負って「夢もチボーもないよ」「イロイロあらあな」などの栃木なまり丸出しのギャグが大うけしたが、事件を起こして芸能界を追われ、病に倒れ早逝した。

挫折しても「夢と希望」を失わない小池氏と比べるのはおかしいが、「夢も…」のギャグだけでなく、百合子グリーンと色が共通する東京ぼん太氏の唐草模様の風呂敷は、なぜか小池氏愛用の市松模様の風呂敷も連想させる。小池氏が前回から56年後の東京五輪で大輪の花を咲かせることで、「真の政治家」として初の女性首相を目指せるのかどうか…。小池氏の勝負はまだまだ続くことは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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