「言論の自由」を抑圧し続ける習近平氏の末路 なぜそんな賭けに打って出るのか

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今秋、当局は最も人気のあるメッセージサービス(Weibo、WeChat、およびBaidu)の調査を始め、これらのサービスが「テロ関連(のうわさ)とポルノに関するコンテンツ」のやり取りに使われていたことを見つけ出した。

しかし、ジャーナリズムへの抑圧が強まるにつれて社会からの反発が増し、決起したジャーナリストや映画制作者が中国の暗い面を取り上げ続けている。2012年には、自転車に乗って中国社会における政府の検閲や過酷さ、大きな格差について調査するブロガーたちを追った『ハイテク、ローライフ』という映画が公開された。

国民の疑問や反発を抑えるのは難しい

禁じられた情報や批評を抑圧することは、今ではとても困難になりつつある。中国学者ペリー・リンク氏は、2014年に「内部的に扱うのが難しくなっている。

なぜなら、下からの苦情や要求は以前よりも増えており、以前よりもよく組織化されているからだ」と語っている。中産階級は今や数百万人に達している。コンサルティング会社のマッキンゼーは、今後5年のうちに、中国の都市中流階級の75%がイタリアに近い生活水準を享受するだろうと予想している。

この、より独立した、そしてしばしば独立心をもった若者の数は、ソーシャルメディアの普及とともに膨らんでいる。この2つの力の「出合い」はあきらめて服従するという道を選ばないだろう。また、より多くの人が海外に出ることになれば、多くの人が外国で流されている情報に触れることになる。

その結果、より多くの中国人が探求心を持ち、批判的になるだろう。彼らは、なぜ1つの政党が、かつて何百万人も死に追いやり、現在人々に何を読んで何を学ぶかを決めているのか、この支配は永遠に続くのか疑問に持つ可能性がある。

習氏の賭けは、彼にすべての権力を集めることで、こうした勢力が膨らんでいくのを防ぐことである。しかし、それは難しいだろう。腐敗、公害、不平等、官僚主義、そして統制されたメディアは、国民の反発を招き続けるだろう。習氏の、権威主義の支配を緩めるのではなく強めるという選択は、大きな誤りであることが判明するはずだ。彼にとっても、彼の国、そして中国が重大な役割を果たす国にとっても。

著者のジョン・ロイド氏は、オックスフォード大学のロイタージャーナリズム研究所の共同創設者。このコラムは同氏個人の見解に基づいている。
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