「いい人と結婚しよう」では一生結婚できない 「この人がいい」じゃなく「この人でいいや」

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そこで31歳の1月1日に「よし、結婚してみよう」と決めたそうだ。当時付き合っている人もいなかったにもかかわらずだ。その3カ月後の春、彼は知人に誘われて人生ではじめて花見に参加した。結婚すると決めたのだから、出会いがあるかもしれないと……。そこでのちに奥さんとなる女性と出会うのである。始めていった花見で出会った女性と結婚する。これだけなら、少しロマンチックな気がしなくもないけれど、彼の場合は違う。ある種ホラーの様相を呈する。

恋愛本ではないけれど

『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

その花見で彼女には、結婚とはこうやってやるものです。僕はもう決めました、あなたに意思決定したので、あとはあなた次第です。というようなことを話したという。初めてあった人からそんなことを言われたら、さすがに怖いと思うんだけど……。そこから半年は彼女から無視され続けたって、そりゃそうだ。それ一歩間違えればストーカーだもの。

それでも彼は「この人と結婚する」と意思決定をしているからと、その彼女に対し会うことをお願いし続けたところ、1年後くらいにはじめて2人で会うことになった。そこで彼は財布を忘れるとかいうウルトラCを決め、さすがに2度目はないだろうと本人も思っていたけれど、それでもあなたと結婚するということはもう決めているのだからと、あきらめずにアタックし続けたことで、ついに相手が折れて結婚するに至ったという。そのあとで彼は元も子もないこと言っている。

“結婚とは「この人がいい」じゃなく、「この人でいいや」”

確かにそうかもしれない。と、これを読んで思ってしまったけども、いろいろ失礼じゃないか?それは。研究者的な視点から「この人でいいや」と思ってもらうためにはどうしたらいいのか?ということもその続きに書かれている。恋愛本ではないけれど、その部分は間違いなく使えると思うので、婚活中の人はぜひ参考にしてほしい。ただし彼の真似だけは推奨しない。やっぱり、それストーカーじゃないか?と思ってしまうし、こんな人が身近にいたら怖いからだ。

それにしても石川善樹という人の考え方はほんとにおもしろい。表題の『どうすれば幸せになれるか科学的に考えてみた』という話もエビデンスをもとに話をしている。その中でも

“「世界を変えようと思うなら自分が変わればいい」って言葉があるんですけど、自分が変わると世界は勝手に変わりますよね。”

というような言葉などは心に響くものがあった。対談本というのはあんまり売れないと言われているけれど、この本は笑えるだけじゃなく、とても為になるから、ぜひとも多くの人に読んでほしい1冊である。

田中 大輔  HONZ

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たなか だいすけ / Daisuke Tanaka

1980年千葉県生まれ。文化服装学院技術専攻科卒。アパレルの販売職を経て、丸善・丸の内本店で10年間ビジネス書担当として働く。書店員時代には日経MJやDIMEなどで書評を連載。2015年に書店を退職し、現在は出版社勤務。週刊新潮で月に一度ビジネス書捕物帖という連載を執筆中。好きなジャンルはビジネス、カルチャー、ファッション、音楽、食(特にお酒)など。

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