民進系「右往左往」と政府・自民「驕り」の復活 質問時間逆転を迫る自民、対抗できない野党

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そうした中で突然、政府・自民党が仕掛けたのが、野党の質問時間を制限する作戦だ。通常国会から首相らの頭痛の種となってきた「森友・加計学園疑惑」はまったく解明が進んでいない。首相は「真摯に丁寧に説明する」と繰り返してきたが、今回の質問時間見直しの動きは、「国会審議で野党追及の時間短縮を狙ったものであることはミエミエ」(共産党幹部)だ。

首相らは自民圧勝という結果にも「謙虚」を合言葉に笑顔も封印してきただけに「早くも地金が出た」(同)と批判されても仕方がない。野党側は「とんでもない暴論で妥協の余地もない」(枝野立憲民主党代表)などと猛反発している。

質問時間の落としどころは「4対6」だが…

与野党の国会でのそれぞれの質問時間は、国会運営上の慣例として議席数に比例させずに野党側に多く配分されてきた。論戦の主舞台となる予算委での質問時間配分をみると、2009年の政権交代前はおおむね与野党は「3対7」だったが、民主党政権下で強力野党だった自民党の要求で「2対8」となり、第2次安倍政権以降も基本的にそれが踏襲されてきた。

しかし、自民圧勝で多くが勝ち上がった当選3回組の一部議員が「われわれは『魔の2回生』と呼ばれ、大勢なので質問の機会も少なく、週刊誌などで『働かない議員』などと批判されてきた」として党執行部に議席数に見合った質問時間の確保を直訴した。これに首相も理解を示したことから自民党側が時間配分の「7対3」への逆転を提案したというのが経緯だ。

自民党も「あれは言い値で、落としどころは『4対6』あたり」(国対幹部)が本音とみられるが、野党側は「もともと野党時代の自民党が要求したもので、手の平返しも度が過ぎる」(共産党)と折り合う気配もない。

ただ、野党側も民進分裂の後遺症などで国会戦略はまだ定まっていない弱みもある。特に希望の党は代表質問などで自民追及の先頭に立つはずの共同代表が不在で特別国会後の選出を想定している。このため、自民が当初提案した特別国会の会期8日間を1カ月程度に拡大した場合は、会期中の共同代表選実施という異常事態ともなりかねない。それでは野党が要求する首相の所信表明演説と各党代表質問、さらには衆参両院での予算委審議や疑惑解明のための集中審議や証人喚問に対応するための野党態勢づくりがすべて後手に回り、「与党を利する結果」(立憲民主幹部)にもなりかねない。

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