「貧困を脱した沖縄女性」が語る壮絶なる貧困

幼少時代はツナ缶と庭のヨモギが夕飯だった

「みんな借りている。親も学校の先生も当たり前のように借りることを薦めてくる。こわかったけど、みんな借りるからいいやって借りました。借りないと実家の生活がまわらない。奨学金が家計に組み込まれるんです」

奨学金が家計に組み込まれるのは、貧困状態が続く新垣さんも例外ではなかった。

「私大に進学した姉は、奨学金で車を買ったりしていました。沖縄は車がないとなにもできない。大学進学した子どもは、まず奨学金で免許を取って車を買う。それが普通。私大だと卒業のときに総額400万~500万円になって自分の給料から返済するんですけど、家には姉の督促状がたくさんきていました。姉も今は返済を再開したようですが……。借りたものは返さなきゃいけないのに、返済しないのも普通。けっこう多くの人が順調には返していないようですね」

「琉大時代は兄と姉が家を飛びだして、内地に行った。家は母親と私と弟でした。母は年収100万円程度しか稼げなくて、私のバイトと奨学金の収入の120万円くらいで弟を高校進学させました。弟も中学生からアイスを売って、高校からバイトをして家におカネを入れてみたいな。そうやってずっと家がギリギリにまわっているのです」

新卒で「手取り10万円」が普通

卒業時、奨学金の貸与総額は300万円弱となった。現在は月2万円程度を毎月返済している。新垣さんは一流企業に就職した。初任給は17万円、手取りは14万円程度だった。奨学金の返済分を差し引くと11万~12万円しか残らない。

「手取り10万円とか11万円が普通ですから、私の新卒のときの手取り14万円は、同年代ではかなり高所得なほうです。内地の企業でも賃金は沖縄価格で支払うので、みんな安い。沖縄は家賃も物価も光熱費も普通に内地以上に高いし、自立なんてしようがないのです」

このままではいけないと、昨年退社をして上京。契約社員で残業なし、手取り19万円だった。賃金の高さに驚いたという。シェアハウスの家賃3万5000円、奨学金返済2万円、2万円を実家に仕送りしても11万5000円が残る。

「沖縄にいると、貧しさに慣れちゃう。内地と比べると、いろいろなことがおかしいのに、沖縄の中では誰も疑問を持たない。貧困とか暴力とか高校中退とか、あと親が仕事でいないとか、夜の世界で働くことが普通になる。親がいないから子どもたち同士で遊ぶし、地元のつながりが強くなって、地元から抜け出せない。それで、みんな井の中の蛙になる。助け合いはあるけど、競争がないので賃金はずっと安い。沖縄は根本から変わっていかないと全国最下位は永遠に続くと思います」

内地に飛び出していった兄も姉も、数年間で「内地は厳しすぎる」と沖縄に戻ってきた。現在、姉は実家に暮らしている。

「内地に出た人は、ほとんど沖縄に戻ってくる。理由は仕事や人間関係が厳しいから。結果的に一部の優秀な人だけが内地に行き、沖縄にいる人は貧困に飼いならされて生きている。やっぱり教育です。内地の人と戦える、貧困じゃなくなるためには、勉強して知識をつけてベースアップして10年、20年単位で立ち直っていかないと」

新垣さんは「沖縄のために働きたい」と力強く言っていた。

【2018年10月15日18時00分追記】初出時、関係者に不快な思いをさせかねない記述があったため、一部の表現を変更しました。

本連載では貧困や生活苦でお悩みの方からの情報をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
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