「貧困を脱した沖縄女性」が語る壮絶なる貧困

幼少時代はツナ缶と庭のヨモギが夕飯だった

得意だった勉強はした。成績はすべて5段階の4以上、県内の進学校に行きたかった。母親に相談すると「制服が買えない。お姉ちゃんと同じ高校にしなさい」と言われた。そのため、志望校より偏差値が10以上低い中堅高校に進学せざるをえなかった。

「沖縄は学力が低い。県内トップ高校で偏差値60くらい、50でもすごいって感覚です。中学生から近所のスナックとか那覇市の松山とかでキャバクラとか風俗で働く子もいるし、家が貧しいので勉強どころじゃない。だから仕方ない。たぶん中学の女子の同級生の4~5割くらいは、夜とか風俗の道に進んでいると思います」

売春や風俗は「普通のこと」

昨年6月、筆者は沖縄最大の繁華街である那覇市松山を取材した。風俗経営者からは中学生に売春をさせる違法店の存在を聞いた。実際に場所も確認している。

経営者は「中学生で夜働きたい子はたくさんいる。未成年の店をやれば簡単に女の子は集まる。捕まる覚悟さえすれば、すぐ開業できる。送迎はマイクロバス。那覇だけじゃなくて名護や宜野湾をまわって、中学生を松山に連れてくる。シングルの親が娘を連れてくることもある」と、当たり前のように言っていた。

「売春とか風俗とか普通のこと。まじめだった私も、そんなことでは全然驚きません。高校からは夕方からできる事務職をやりました。高校になると、もうほとんどの子はアルバイト。親のおカネだけで部活を頑張る子は少ない。文系理系でクラスが分かれて、文系クラスの子は遊ぶ子も多かった。同級生の十何人かは、北谷でアメ女をやっていました。基地のアメリカ人はおカネがあるから、彼女になったり肉体関係になったりしてお小遣いをもらうんです」

アメ女とは沖縄独自の言葉で、蔑称として使われている。基地に働くアメリカ人を相手に恋愛や売春したりしておカネをもらう女性のことで、沖縄の男性はそういう女性を嫌う傾向にある。

高校生になると、多くの家庭で家計を支えることや自立を求められる。沖縄は高校中退率も極めて高く、最初はアルバイトが忙しくなって授業を休みがちになり、やがて退学をする。高校2年をすぎると妊娠する子も出てきて、出来ちゃった婚や未婚のままシングルマザーになったりする。未成年のまま高校中退した女の子たちの多くは、雇用を求めて当たり前のように夜の繁華街へと流れていく。

「ホストになればいい、キャバ嬢やればいい、その距離が近すぎる。貧しいからそうなる。教養のない人がやる仕事が近すぎるし、先のことを想像しないで簡単に高校中退するから選択肢がなくなる。高校卒業して就職しても、すぐに辞めちゃう。それで、またどんどん夜の世界に行っちゃう。貧乏とか貧困がそうさせています」

新垣さんはアルバイトをして家計を支えながら、空き時間を見つけて懸命に勉強することで琉球大学に合格した。沖縄のトップ層である。

沖縄では、子どもは高校進学で自立するのが一般的だ。さらに大学進学になると公務員や一部の富裕層の子弟以外、“金融事業”との批判もある日本学生支援機構の奨学金頼みになる。沖縄では学費や学生生活の費用以外に消費されるのは普通のことだ。

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