スバルでも無資格検査、30年以上常態化の謎 安心・安全が看板のメーカーで何が起きたか

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なぜ無資格検査が起きたのか。それは、生産現場のルールが形骸化していたことに起因する。スバルの長い歴史の中で引き継がれ、常態化してきた現場での悪しき慣習が、今回日産の問題をきっかけに明るみになった。知識や技術を継承する中で明文化されない「暗黙知」や「すり合わせ」によって回っていた現場は、日本のものづくりの強さともいえる。

「まだまだ実力が追いついていない」

だが、グローバル化によってマニュアルによる明文化や契約の厳格化が求められる今の時代、あらゆる業務は「あ・うんの呼吸」では通用しなくなっている。「スバルの経営が、グローバルを目指す上でまだまだ実力に追いついていないと認識した」と、吉永社長はうなだれる。

吉永社長は「日本のものづくりの信用を当社が揺るがしていることに忸怩たる思いがある」と話した(撮影:尾形文繁)

裾野の広い製造業においては、経営が現場のすべてを把握しきれないことも問題だ。大崎執行役員は、今後スバル内のすべての業務規定に、同様の問題がないかを洗い出していくという。膨大な数の規定を洗い出すには時間が必要だが、信頼回復に努める狙いだ。

スバルの連結売上高のうち、国内は2割のため、ここ5年間好調な業績への影響は相対的に少ない。だが、吉永社長は「ブランドの毀損を本当に心配している」と危機感を募らせる。ブランドの骨格に据える安心と安全に対する信頼が失墜すれば大きな命取りになりかねない。スバルがグローバル企業として次のステップに上がれるかは、今後の対応にかかっている。

森川 郁子 東洋経済 記者

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もりかわ いくこ / Ikuko Morikawa

自動車・部品メーカー担当。慶応義塾大学法学部在学中、メキシコ国立自治大学に留学。2017年、東洋経済新報社入社。趣味はドライブと都内の芝生探し、休日は鈍行列車の旅に出ている。

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