「約20年前ソフトバンクさんの担当で、孫(正義)さんがクライアントでした。あるとき、孫さんから『今回新しいことを始めようと思っていて、相談したいことがあるのですが』と言われました。私が『何でしょうか?』と聞き返すと、『森本さん、ヤフーって知ってる?』と言われたんです」
そのとき、孫さんはヤフーのスターティングメンバーを採用したいと考え、森本さんに相談を持ちかけた。ところが、森本さんは、「インターネット」という言葉もそこで初めて聞いたぐらいで、孫さんから「検索エンジン」と言われても、てっきり「車のエンジン」を造る会社かなと思っていたという。
それから、ほんの数年で「インターネット」が世界を席巻し、「ヤフー」は瞬く間に超有名企業となった。同時に、プログラマーやエンジニアなどのIT人材に対する需要が飛躍的に伸張していったことは誰もが知るところだろう。
「今の時代、数年先には景色がガラッと変わる可能性があります。世間で言われるように、AIに代表されるようなテクノロジーが進歩することで、これまで存在していた仕事がなくなったり、これまで存在しなかった仕事が生まれたりすることが、普通に起こりえます。そういう意味でも、複数の選択肢を持っておくというのも、私はキャリアを考えるうえで重要なことだと思っています」
森本さんはこうした経験からも、一人多職として複数の「切り札」をそろえることの重要性を認識するようになったのだろう。
第2子誕生がターニングポイントに
紹介営業に開眼しメキメキ頭角を現し始め、トランプでいうと切り札・「A(エース)」になった森本さん。やがてマネジメント職に就き、「Q(クイーン=女王)」として多くの部下の管理にあたることになる。
もともと、組織マネジメントに興味があった森本さんは、部下の育成やチームビルディングに燃えていた。第1子を生んだ後も、夫のサポートがあったので、やりがいのある仕事に取り組むことができた。ところが、2010年に予期せぬ出来事が起きる。
「第2子を生んだ途端、夫が単身赴任になってしまいました。そうなると、月曜から金曜まで夫は不在、いわゆる“ワンオペ育児”状態です。加えて私の実家は関西なので、親のサポートも日常的には得られず、さすがに組織マネジメントは無理だなと思いました。そこで、思い切って『転職コンサルタント』という自己完結型の仕事にシフトすることにしたのです」
いつも願いがかなうわけではない。時には、「変化適応力」も重要だと言う森本さんは、自分で時間をコントロールしにくい仕事への思いを断ち切り、自分で時間をコントロールしやすい仕事で自分の価値を高めていこうと決断する。
「私は、夫や周囲からよく『反省しない』と言われるんです(笑)。いつも『反省するエネルギーがあるくらいなら、前だけを見て長所を伸ばそう!』って思うんですよね。でも、そうしたら、やっぱり持て余しちゃったわけですよ(笑)。それまでは、100人近い社員のマネジメントに携わっていたので、そこに燃やしていた情熱をどこに向けようかと思っちゃって(笑)。そこから、会社の外にも目を向けるようになっていったんです」
このときを境に、森本さんは活動範囲を社外へ広げ、書籍の出版、講演、メディアへの出演など、対外的な情報発信にも積極的に取り組み始めた。
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