「企業脱出」続くカタルーニャ独立のジレンマ スペイン最古の企業もついに去った

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同首相はまた、カタルーニャ州が「安定」した時点で、州議会選挙を早期に実施すると表明。一部メディアでは、スペイン政府が州政府の自治権を停止した後、暫定政府を2カ月ほどおき、その後選挙を開催するとも取りざたされている。

一方、スペイン上院で155条発動に向けた審議が行われている最中に、カタルーニャ州政府が議会を招集し、独立宣言をする可能性も浮上している。ただ、ジュンケラス副州知事率いる左派共和党が独立宣言を主張しているのに対し、プチデモン州知事のカタルーニャ民主集中の党内には、州議会を解散させて、州議会選挙に踏み切るべきだという意見もあるという。そうすれば、自治機能を停止させられるという屈辱を回避できるからだ。

スペインで最も古い企業も去った

スペイン政府とカタルーニャ州政府の葛藤が続く中で、カタルーニャに本拠を置いていた企業の流出が続いており、10月以降、1200社余りがその手続きをしている。州政府は、独立した暁には、カタルーニャ共和国の2大銀行カイシャバンクとサバデル銀行をメインバンクとする構想を練っていたが、この2行もバレンシア州に本社を移転させている。

カタルーニャが独立した場合、新国家が欧州連合(EU)に加盟するのは困難を極めるとみられる。となれば、ユーロは使えなくなるし、欧州中央銀行とも取引ができなくなる。こうした国家に本社を構えることは、銀行にとって致命傷になりかねない。このため、2行は本社移転に踏み切ったのである。

このほかにも、州外に移った有名企業は少なくない。たとえば、スパークリングワイン、カバの老舗メーカーであるCodorniu(コドルニウ)は本社をラ・リオハに移すことを決めた。1551年創業の同社は、スペインで最も古い企業として知られ、カタルーニャのシンボル企業といっても過言ではない。その同社が移転を発表した10月16日には、スペイン中のメディアがこれを報じた。

また、同じくシンボル的な企業で、セメント大手のセメント・モリンスもマドリードへの本社移転を決定。同社の元社長ホアキン・モリンス氏は議員経験もあり、現在のカタルーニャ州政府を支えている連立政党にも関係してきた。ゆえにカタルーニャ州政府とは関係が深い企業であるが、他社と同様、カタルーニャの先行きに不安を覚え、本社を移転させたようだ。

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