「フライトフル5」がIT業界を根本から変えた シリコンバレーに大企業病は存在しない?
今日のIT界の巨大企業は、かつての大手よりも新興企業との競争についてより抜け目なく、偏執的になっており、すばらしいビジネスのアイデアを最初に思いつかなくても自分たちが儲かるようなエコシステムを構築している。フライトフルファイブはクラウドサーバーやアプリのストア、広告ネットワークやベンチャー企業など、規模の小さい企業は相当な負担を強いられるものを運営している。
フライトフルファイブにとっては、スタートアップ経済はどう転んでも損をしないものに変わっている。彼らはスタートアップを好んでいるが、同時にそれをのみ込むことも好むのだ。
小規模な企業も当然ながら勝利を譲ろうとはしていない。とどまるところをしらない楽観主義がスタートアップの世界を勢いづかせている。筆者が最近話を聞いた多くの投資家やスタートアップの幹部は、驚くほどの資金がスタートアップに注がれており、フライトフルファイブがすべてのゲームに勝利しているわけではないと主張する。
フライトフルファイブのプラットフォームが起業をより安く、より簡単にしたと彼らは指摘し、この数年でそれら5社による支配から免れ、成功したスタートアップとしてネットフリックス、ウーバー、エアビーアンドビーなどの名前を挙げた。知名度はそれほど高くはない企業も含めれば、スラック、ストライプ、スクエアなどほかにも何十社もある。
大企業を巧みに操る
「多くの意味で以前から変わっていない」と、ニューヨークのインターネットメディア企業IACのジョーイ・レビン最高経営責任者(CEO)は言う。
「インターネットの世界に長らく携わっているが、私が業界に入った当時は、ミーティングで最初に相手に尋ねていたのは『なぜマイクロソフトはあなたのビジネスをしないのか?』だった。6年が経つと『なぜグーグルはそれをしないのか?』となり、今では、フェイスブック、グーグル、アップル、もしくはアマゾンがそれをできない理由は何かと聞く」
レビンの立場は興味深いもので、IACの名前を聞いたことがない人もいるかもしれないが、同社はネットの世界で長きにわたり大手と戦いを繰り広げてきた。1990年代にメディア王バリー・ディラーが手掛けるテレビ事業から生まれ、この20年で大手の手が及ばない分野で基盤を固めてきたブランドをいくつも創設してきた。エクスペディア、マッチドットコム、ティンダー、アスクドットコム、ヴィメオなどもその一部だ。
なかには業界のトップに君臨した企業もあれば、IT大手にかなわなかった企業もある。しかし、多くのケースでIACは大企業を巧妙に操って利益を生んできた。巨大企業と手を結ぶときもあれば、競合するときもあるが、つねに大企業の周辺にあるチャンスを追い求めてきた。賢いハトがピクニックをしている人の周りをうろついてパン粉をついばむようにだ。
IACの最近の取り組みが「Angi Homeservices」で、住宅の修繕と改装を行う「Angie’s List」と「HomeAdvisor」という2つの大手ブランドを合併させた。同社は、住居向けに機器等の設置業者を見つけるサービスを提供しているグーグルやアマゾンと直接競合する。