吉野家社長「現時点で牛丼値上げ計画はない」 牛丼依存からの脱却に向け、鶏肉商品投入も
そこで昨年春、東京の恵比寿駅前店をU字型カウンターがない店舗に改装した。商品の受け取りや下膳をお客様にやってもらい、従業員の負担を軽減している。お客様にとっては、ゆったりと座れるので食後にメールを打ったり、コーヒーを飲んだりすることもできる。単純に料理のおいしさだけを追求するのではなく、そういった付加価値まで提供していかないと、胃袋の奪い合いには勝てない。
今年に入って仙台、名古屋、大阪、博多と全国の大都市にも同様の店舗を広げて検証を始めたが、非常に反応がいい。当社の取り込みが弱かった女性を中心に客数が増えている。
M&Aは成長性を重視する
──近年、吉野家の国内店舗数は増えていない。国内市場は頭打ちなのか。
これまでは1200店がすべて同じ形式の店舗だった。今後はいくつかの店舗形式に分けることを目指す。一部店舗で実験中の、U字型カウンターを設置しない形式も展開していく。従来型店舗に加え、地域ごとのマーケットに応じた形で出店していきたい。ただ、吉野家は出店してから年数が経っている店舗も多いので、どうしても建て替えが中心になる。
調理工程など人がやることで価値が生まれる仕事以外は、すべて機械化してもいい。食器洗浄ロボットなどの導入実験も進めている。現場の負担軽減と、店舗作業の効率化を実現していきたい。
――グループ全体の今後の展望は。
現在は、はなまるうどんと回転ずしの「海鮮三崎港」が成長している。国内では、はなまるうどんの店舗純増が当分続いていくだろう。海鮮三崎港については、郊外では戦わないという意思決定をして10年近くになる。回転ずしの大手チェーンも都心部への進出を狙い始めているが、今のところは都心部での展開ノウハウを持つ当社が有利に戦えている。
さらに、これらのブランドが成長できているうちに、次の成長エンジンとなるブランドを育てていかなければならない。たとえば、ラーメン店「せたが屋」を昨年6月にグループに招いたのはその1つ。当社のM&A戦略は、ターンアラウンド型(再生型事業投資)よりも、成長性に重きを置いている。国内外で成長を期待できるブランドがあれば考えていきたい。
(『週刊東洋経済』10月21日号「この人に聞く」に加筆)
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