神田昌典「10年前のマーケ本が売れる理由」

日米で読み継がれる「究極のセールスレター」

ただ、繰り返すが、このノウハウは心理誘導に近い部分もあり、劇薬なので、米国人よりも自我が希薄な日本人に使った場合、売り上げは急激に上がるものの、その後、マーケティングの闇(苦情や誹謗中傷、ネガティブな口コミ、さらにはその心理的な悪影響)を生むこともある。

使うものの倫理観が問われるノウハウであるが――顧客が抱える問題に共感をもち、解決策を提案するといった親身な態度で使っていただくかぎり――必要な商品を、必要な顧客に届けるための効果的なツールになろう。

読者に生じるであろうもう1つの疑問は、「インターネットの普及により、郵送によるダイレクトメールを出す頻度が減ってきているいま、本書のセールスレターのノウハウはもはや古くて、使えないんじゃないか?」という疑問である。

お約束しよう。ここに書かれていることは、媒体を問わない。

たとえば、本書にサンプルとして挙げられているセールスレターのコンセプトをまねて文章を作ってみよう。文章(トーン)には米国人の文化が反映されているので、日本人のあなたが友達に出してみて違和感がないように直したほうがいいが、コンセプトはそのまま使えるはずだ。

そして、その内容を、顧客に告知してみればいい。すると、郵送によるダイレクトメールだろうが、ファックスによるダイレクトメールだろうが、電子メールによるメールマガジンだろうが、驚くほど反応が得られることになるだろう。

ライバルには内緒にしたいマーケティングの原理原則

20年ほど前、インターネットで商品を売り始めたころ、ダイレクトマーケッターの多くは、どのようなホームページが最も効率的に売り上げを上げることができるか、試行錯誤していた。

ホームページは郵送によるダイレクトメールとは異なるのだから、写真や色を豊富に使い、逆に文章は短く簡潔に説明するほうが売れると考える人もいた。しかし、ネット上での販売経験が積み重なるにつれて、結局のところ、本書に書かれている、手紙の時代にうまくいった原理原則が、ネットにおいても最も効果が高いことが証明されていった。

要は、媒体がどうのこうのではなく、人間を知っているかどうかなのである。人間が購買決定する瞬間の心理を見つける。そして、その心理を掘り起こすために必要な情報を、誠実に、提供すること。その真実の瞬間から、目をそらしていない本書の原理原則は、いつの時代でも活用できるだろう。

技術の進展とともに、媒体は手紙、電子メール、ブログ、SNSと、目まぐるしく変わっていく。しかし、その変化のなかでも、ますます繁栄していくのは、やはり原理原則を貫く人々なのである。

いつ手に取ってみても、学ぶことがある。その理由は、本書が、マーケティングの原理原則を網羅する教科書となったからにほかならないだろう。マーケティングとは、あなたの価値を、世界へと提供していく最高の方法論だ。

それは決して、売り上げに責任をもつビジネスパーソンに限られるものではなく、まわりに影響力を及ぼしていくために、誰にとっても必須のスキルである。本書をきっかけに、言葉の力に気づいていただければ幸いである。

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